2022 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of Euglena-based biorefinery
Project/Area Number |
20H03119
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
中澤 昌美 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 講師 (90343417)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嫌気的呼吸 / 発酵 / バイオリファイナリー / ユーグレナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ユーグレナが有する嫌気下物質生産能力の全体像を理解し、より高付加価値な代謝産物を合成する代謝改変につなげるために、嫌気下でのユーグレナ物質能を様々な側面から解析している。本年度は、嫌気的呼吸鎖およびミトコンドリア脂肪酸合成系酵素をノックダウンもしくはノックアウトしたユーグレナ株を種々作出し、嫌気処理後のワックスエステル生産および培地上清中の有機酸量に及ぼす影響を検証した。嫌気的呼吸鎖の中でも、主に低い酸化還元電位を有するキノン化合物であるロドキノンの合成能欠損株について解析を進めた。この株では、予想された通りワックスエステル合成能が、コントロール細胞の10%程度まで低下していた。しかし、同時に予想されたコハク酸合成能の低下は起こらなかった。これは、従来ロドキノンを有する嫌気適応生物におけるロドキノンの主な機能がフマル酸還元によるコハク酸生産であるとされてきたこととは矛盾する結果であった。現在、呼吸鎖の阻害剤と組み合わせて代謝解析を行うことで、ロドキノンを有さない状態での細胞における嫌気下での電子伝達理解につなげようとしている。また、ワックスエステルへの炭素鎖供給を担う酵素について、ピルビン酸NADP+酸化還元酵素、3-ケトアシルCoAチオラーゼ、アシル-CoAデヒドロゲナーゼのノックアウト株の作出に新たに成功した。これらのノックアウト株におけるワックスエステル・有機酸合成の動態を理解することによって、嫌気的環境でユーグレナが生存を維持するために必要な要素に関する理解が深まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
嫌気的呼吸鎖およびワックスエステル合成に関わる代謝改変体について、研究開始当初は主に阻害剤とノックダウンによる検証を重視していたが、予想以上にゲノム編集によるノックアウト体の作出が順調に進んだため、継続的に細胞の代謝をモニタリングできる系が整った。そのため、研究当初の想定以上の解析を進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度の目的として、嫌気環境における炭素代謝の全体像を漏れなく把握するために、各代謝産物の収支の詳細な解析を進める。さらに、本年度の前半に予定しているユーグレナ形質転換に関する論文発表内容をベースに、少ないステップの代謝改変で高付加価値な代謝産物を獲得できる系のモデルを示す予定である。
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