2020 Fiscal Year Annual Research Report
Ovarian dysfunction related to exosomal deficiency
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20H03124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉浦 幸二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20595623)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣はメスの生殖を担う重要な臓器であり、その発達や機能制御は盛んに研究されてきた。しかし、卵巣異常・疾患の原因の多くは未解明であり、家畜繁殖障害や女性不妊症などの予防・治療法開発の障壁となっている。エクソソームは、細胞の分泌する膜小胞であり、細胞間の情報伝達を担う新規因子として注目されている。我々は、ブタやマウスの卵巣内にエクソソームが存在し、卵巣の発達や排卵制御に関与する可能性を報告してきた。したがって、エクソソーム制御異常が未解明の卵巣異常・疾患の原因である可能性があるが、具体的にどのような疾患を呈するのか不明である。本研究では、卵巣特異的にエクソソーム分泌を抑制したマウスの表現型解析と、ブタとマウス卵巣培養実験を通して、エクソソーム欠損に起因する卵巣異常・疾患の同定、卵巣のエクソソームの機能の包括的理解、さらにそれを担うエクソソーム内因子の解明を目的ととした。この目的のため、本年度は、壁顆粒層細胞における主要なN-SMase遺伝子(Smpd4)を欠損したマウスを作製し、RNAシークエンス解析によって網羅的に遺伝子発現解析を行う予定であった。しかしコロナ禍のため、海外からのマウス精液輸入手続きが一旦止まってしまい、当初予定していたSmpd4欠損マウスを作製に取り掛かることができなかった。一方で、当初計画では予定していなかったが、卵由来の増殖因子が壁顆粒層細胞によるエクソソーム分泌に与える影響を解析し、卵由来増殖因子はエクソソーム分泌に影響を与えないことを明らかとした。この知見は卵巣発達制御において重要な役割を果たす卵由来増殖因子シグナルとエクソソームのシグナルがどのようにかかわって卵巣機能制御に関与しているのかを理解する上で重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、海外からのマウス精液輸入手続きが一旦止まってしまい、当初予定していたSmpd2/4ダブルノックアウトマウス作製およびRNAシークエンシングの受託解析を本年度中に完了することできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
Smpd4を壁顆粒層細胞で特異的に欠損したマウスを作製し、表現型解析を行う。具体的には、野生型雄マウスと交配させての妊孕性の確認、組織切片による卵巣の発達塔体の解析、体外受精による卵発生能の解析などを行う。これらの解析で見られた異常の原因と考えられる細胞(卵丘細胞または壁顆粒層細胞)について、RNAシークエンス解析を行い、遺伝子発現を同腹子の野生型マウスと網羅的に比較する。これにより、異常のメカニズムについての示唆を得る。さらに卵巣制御におけるエクソソームの作用機序理解のため、壁顆粒層細胞をモデルに、エクソソーム取り込み機構の解析を用う。壁顆粒層細胞におけるエクソソーム取り込み機構およびそれに重要な遺伝子の探索することで、将来的に実施予定である、取り込み機構をターゲットとした遺伝子改変動物モデル作製の基礎知見とする。また、卵巣の発達には卵の分泌する増殖因子が重要であることから、エクソソームシグナルがどのように卵由来増殖因子シグナルと関わって卵巣機能制御を行っているかの示唆を得るための予備実験として、エクソソーム取り込みに対する卵由来増殖因子の影響についても解析する予定である。
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Research Products
(2 results)