2022 Fiscal Year Annual Research Report
最終糖化産物がウシ子宮、卵管および胚発育に及ぼす影響とその作用機序の解明
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20H03129
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松山 秀一 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50455317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 康二 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (50355070)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メチルグリオキサール / 牛 / 子宮 / 卵管 / 低受胎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高穀物含量の飼料によって産生されるメチルグリオキサール(MGO)が乳牛における受胎率低下の一因となっていることを検証する。本年度は、ウシ子宮内膜培養細胞へのMGO添加がDNA損傷を誘発するか、炎症に関わるNFkBやIL-8の発現を亢進するかについて検討した。また、ウシ静脈内へのMGO投与が子宮内膜における細胞老化を誘導するかについても検討した。ウシ子宮内膜上皮細胞および間質細胞の培養液中にMGOを0、0.1、1 mMとなるように添加し12時間培養した後、DNA損傷マーカーであるγH2AXタンパクと炎症に関連するNFkB p65タンパクの発現量、IL-8分泌量を測定した。また、ウシ静脈内にMGO(5 mmol/h, 2 h/d)を9日間投与し、子宮内膜組織のSA β-gal陽性細胞数、老化細胞のマーカー遺伝子(p21, p53, p16)およびミトコンドリアの融合や分裂に関わる遺伝子(TFAM, FIS1, MFN1, NRF1)のmRNA発現を測定した。γH2AXタンパク発現量はMGO 1 mM処置区において対照区およびMGO 0.1 mM処置区と比較して有意に増加したことから、ウシ子宮内膜間質細胞においてMGOがDNA損傷を引き起こすことが示された。ウシ子宮内膜上皮細胞および間質細胞におけるNFkB p65タンパク発現量、IL-8分泌量は各処置区間で有意差は認められなかったことから、MGO添加後12時間では炎症反応は惹起されないことが示された。また、子宮内膜組織におけるSA β-gal陽性細胞割合、p21、p53、p16 mRNAおよびTFAM, FIS1, MFN1, NRF1 mRNA発現はMGO投与による変化は見られなかった。これらの結果から、MGOの静脈内投与は投与期間9日間という非常に短い期間であったため細胞老化が誘導されなかった可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、炎症性サイトカインが胚発育に及ぼす時期と影響を検証する実験が一部未実施となっているものの、MGOの静脈中への長期投与が子宮内膜に及ぼす影響を検討する実験やMGOが子宮内膜細胞のDNA損傷および炎症反応を惹起するかどうかを検討する実験については当初の予定どおり実施できており、おおむね順調に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、ウシ子宮内膜培養細胞へのMGO添加が炎症に関わるNFkBやIL-8の発現を亢進するかについて、MGO添加からNFkB p65タンパクの発現量およびIL-8分泌量の測定までの時間条件を変更して引き続き検討を進める。また、体外培養液中へのMGO添加により胚発生率が低下する傾向が見られたことから、令和5年度はMGOが胚発育に及ぼす時期を検証するとともに、老化細胞が分泌する炎症性サイトカインが胚発育に及ぼす時期と影響についても検討を行う。
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