2020 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism for the roles of cholesterol-binding membrane protein TSPO2 in terminal erythroid differentiation
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20H03138
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
稲葉 睦 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (00183179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 健介 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (40570073)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 赤芽球造血 / 赤血球 / コレステロール / コレステロール結合蛋白質 / 貧血 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.TSPO2を欠損する(Tspo2-/-)MEDEP細胞は細胞増殖/細胞質分裂の異常、赤芽球系成熟(ヘモグロビン合成、CD44やCD71等の発現動態)の遅延等、明確な異常を示した。同時にTspo2-/- MEDEP細胞では遊離/エステル型コレステロールの減少が認められた。細胞外からのコレステロール供給は、これらを改善せず、むしろ、Tspo2-/-細胞では細胞増殖がさらに抑制された。高コレステロール食を与えたTspo2-/-マウスは正常食に比べて貧血傾向を示し、骨髄赤芽球系細胞では好塩基性赤芽球や網状赤血球の増加等、造血亢進がみられたが、Tspo2+/+マウスとの有意差は認められなかった。これらは、細胞外コレステロールの供給では細胞の正常な増殖や分裂を改善できず、したがってTSPO2の機能が細胞内でのコレステロール動態・代謝にあることを明確に示している。 2.Tspo2-/- MEDEP細胞は対照細胞と有意差のないNBD-コレステロール取り込みを示した。一方、取り込ませたNBD-コレステロールの減少/流出はTspo2-/- MEDEP細胞が有意に大きな値を示した。 3.マウス/犬キメラTSPO2(m/cTSPO2)をもつMEDEP細胞とマウスの作出を試みたが、クローンが確立できず、また既存抗体によるキメラ型の検出に非特異反応が生じるため、方針を転換し、HAタグ標識TSPO2(TSPO2-HA)をもつ細胞とマウスの作製を進めた。TSPO2-HAを発現する MEDEP細胞株を確立し、TSAPO-HAの発現分布を認め、現在、細胞内局在の詳細を解析している。またノックインマウスも得られ、ヘテロ型個体の骨髄で赤芽球系細胞でのTSPO2-HA発現を検出可能となっており、ホモ接合型での解析を進めるために充分数個体の作出を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.細胞外からの単純なコレステロール供給がTSPO2欠損による赤芽球病態を改善しないこと、TSPO2欠損細胞ではNBD-コレステロールの取り込みに明確な異常はなく、一方で排出が過剰、あるいは保持が低下することが示唆されたのは、遊離型、エステル型、両型のコレステロールが低値であることと一致しており、有用な知見である。これらのデータからTSPO2が細胞内でのコレステロール代謝/輸送に関わる機能をもつことが示唆されるが現時点では実証はない。これには、TSPO2とコレステロールの細胞内分布/動態を把握することが不可欠である。 2. TSPO2とコレステロールの分布や動態の検討が本研究計画に不可欠な重要工程である。TSPO2の可視化のためにはm/cTSPO2を予定したが、上述のとおり巧く機能せず、HAタグ標識TSPO2の発現に方針を転換した。このため当初計画に比べて進行は若干遅れている。MEDEP/TSPO2-HA細胞は既に得られ、TSPO2の細胞内分布を解析中である。ノックインマウスも得られ、ホモ発現個体を確立の後、骨髄細胞を用いた解析を進める予定である。 3.この間、HAやEGFP等のペプチド、蛍光蛋白質で標識したTSPO2を培養細胞に発現させて細胞内分布を解析するなどの検討を同時に行い、基本的には小胞体、核膜、リソソーム、エンドソームに分布することが認められ、別の視点からの基礎検討を進めることができている。所定目標に重要な知見が得られ研究内容自体の進行に阻害要因はないが、全体計画の数ヶ月の遅れは事実であり上記のとおり判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の主題は、細胞内コレステロール動態をTSOP2がどのように調節し、赤芽球系最終分化を効果的に進めるかを明らかにすることである。その解決には、TSPO2とコレステロールの両者を細胞内で明確に検出、あるいは細胞内小器官での分布を明らかにする必要がある。現在進めているMEDEP細胞におけるTSPO2-HA局在解析を含め、主に次の方策に注力して研究を推進する。 1.MEDEP細胞でのTSPO2-HA局在解析を早期、的確に進め、TSPO2の細胞内分布、赤芽球系細胞とその最終分化・成熟過程における時空間的発現変動を明確にする。ノックインマウスはホモ接合型個体の増殖・維持を図り、造血に対する影響の解析の後、骨髄由来赤芽球系細胞について、成熟段階ごとのTSPO2-HAの分布動態解析を行う。 2.上記に併行して、細胞内コレステロール含量、分布、さらにその変動を明らかにする。従来のNBD-コレステロールは消光が著しく細胞内動態追跡が困難なことが判明したため、これに替えてBODIPY標識体や3H-コレステロールを利用した動態解析や小器官での分布、エステル化等を検討することを試みる。 3.これらの手法、実験の状況をみながら、TSPO2分子のCRACドメイン等の作用を検討する。
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[Presentation] TSPO2 coordinates maturation and proliferation of terminally differentiating erythroblasts2020
Author(s)
Benjaporn Kiatpakdee, Kota Sato, Yayoi Otsuka, Nobuto Arashiki, Yuqi Chen, Takuya Tsumita, Wataru Otsu, Akito Yamamoto, Reo Kawata, Yoshikazu Sugimoto, Kensuke Takada1, Narla Mohandas, Mutsumi Inaba
Organizer
2020 “Virtual” Red Cell Club Meeting
Int'l Joint Research / Invited
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