2021 Fiscal Year Annual Research Report
犬膀胱癌の分子異常に着目した新規複合免疫療法の確立
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20H03144
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 貴之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40447363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 大貴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 農学特定研究員 (60843216)
前田 真吾 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80755546)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 犬 / 膀胱癌 / 腫瘍免疫 / IDO / BRAF |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者らが同定した犬膀胱癌のBraf遺伝子異常およびエピジェネティック異常に着目し、それらによる抗腫瘍免疫抑制機序の解明とそれらの阻害による複合免疫療法の有効性の検証である。 今年度は、Braf遺伝子異常シグナルに関連する免疫調節分子およびそれら機序の検証を行った。その結果、Braf遺伝子異常シグナル経路を阻害することで、プロスタグランジン(PG)E2産生およびインドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ1(IDO1)発現が抑制されることを発見した。また、IDO1に関しては、Braf遺伝子異常シグナル以外に、抗腫瘍T細胞が産生するIFNg応答性にも発現が増強することがわかった。 PGE2の免疫抑制機構を探索した結果、PGE2が抗原提示細胞に作用することで抗腫瘍免疫応答を増強する作用を持つ分子群(damage-associated molecular patterns;DAMPs)に対する反応性を減弱されていることを発見し、それら詳細機序について論文報告をした。 IDO1は細胞外から取り込まれた必須アミノ酸トリプトファンをキヌレニンに変換する律速酵素である。膀胱癌細胞株では、IDO1が恒常的に高発現することで、培養上清中のトリプトファンが欠乏していること、およびキヌレニンが蓄積していること、さらにトリプトファン欠乏により抗腫瘍T細胞が抑制されること、キヌレニン蓄積により抗腫瘍T細胞を抑制する制御性T細胞(Treg)が誘導されることを発見した。臨床検体の解析でも、犬膀胱癌全例でIDO1の異所性高発現を確認し、論文報告した。IDO1が治療標的として有望であると考え、IDO1阻害薬の犬膀胱癌移植マウスモデルへの投与により治療効果が得られることを見出し、実験犬での安全性試験を経て臨床試験を立案申請し、臨床例に対する臨床試験を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、本研究で注目する犬膀胱癌の分子異常であるBraf遺伝子変異に関連する抗腫瘍免疫抑制機構として、抗原提示細胞を抑制するPGE2および抗腫瘍T細胞を抑制し制御性T細胞を誘導するIDO1を同定した。さらに、IDO1阻害により抗腫瘍免疫応答が増強されることをマウスモデルにて実証し、現在、犬膀胱癌症例に対する臨床試験を開始することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の解析により発見された、IDO1阻害薬による抗腫瘍免疫増強作用に着目し、IDO1阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用効果について検証を進める。さらに、現在進行中のIDO1阻害薬単剤での臨床試験の成果をもとに、IDO1阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用による新規複合免疫療法について臨床試験を立案し開始する。
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