2020 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of regenerative medicine for musculoskeletal system using clinical-grade canine iPS cells
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20H03156
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
枝村 一弥 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (80366624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 大紀 佐賀大学, 医学部, 助教 (00772683)
塩澤 誠司 久留米大学, 医学部, 特任講師 (10447039)
鳩谷 晋吾 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40453138)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 再生医療 / 運動器疾患 / iPS細胞 / 間葉系幹細胞 / 犬 / 獣医 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の3項目の検討を行った。 1) 臨床グレードの犬のiPS細胞から間葉系幹細胞への分化誘導(枝村、鳩谷):本検討は、日本大学と大阪府大の2つの機関で実施した。まずは、TGF-β阻害剤とGSK阻害剤を含む培地で神経堤細胞を誘導し、間葉系幹細胞培地を用いて分化誘導を試みた。次いで、AMPK阻害剤を加えて神経堤細胞を誘導する方法も試みた。さらに、胚葉体を経由した方法も実施した。一部において紡錘形の細胞が認められたが、犬のiPS細胞から間葉系幹細胞への効率の良い分化誘導は得られなかった。一方、大阪府大で保有する株においては、TGF-β阻害剤を含んだ培地を用いることで、犬のiPS細胞から間葉系幹細胞への分化誘導へ成功した。 2) 拒絶反応の少ない犬のiPS細胞の備蓄および創生(枝村、塩澤):本年度は、拒絶反応の少ない犬のiPS細胞の作出を目的とし、iPS細胞のゲノム編集技術の確立を進めた。久留米大では、培養細胞におけるゲノム編集実施環境の整備を進め、対照実験に用いるガイドRNAの設計および作製を実施した。また、リプログラミング因子mRNA導入による高品質なiPS細胞株作出技術の開発のため、まず、体細胞への遺伝子導入法の検討を行った。対照としてEGFPをコードするmRNAを用い、脂質量および導入期間等を最適化した。さらに、日本大学では拒絶反応の起きにくいMHCホモ接合体の個体を同定する作業を進めた。 3) 臨床グレードの犬のiPS細胞から靭帯細胞への分化誘導法の開発(村田):本検討は、佐賀大学を中心に行った。ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞からなる細胞凝集塊を用いて、バイオ3Dプリンタにより牽引に対して強度を有するシート状の細胞構造体を造形し、自動で周期的な伸展刺激を一定期間与えることで、細胞と細胞外基質を牽引方向へと再配列させ、靭帯様の組織体を作製することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多施設間で、問題点を共有しながら進めているので、概ね順調に推移している。実際には、臨床グレードのiPS細胞から間葉系幹細胞への分化誘導を試み、当初の計画に沿うように分化誘導法の有力な候補を見出すことができた(枝村、鳩谷)。拒絶反応の少ない犬のiPS細胞の備蓄については、MHCホモ接合体の個体の同定作業を行い、当該iPS 細胞の備蓄を計画通りに開始できている(枝村、塩澤)。一方で、ゲノム編集技術を用いた拒絶反応が生じにくい犬のiPS細胞の作製については遅れが生じている。犬のiPS細胞から靭帯組織への作製については、基礎実験が開始され、順調に進捗している(村田)。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床グレードの犬のiPS細胞を用いた運動器再生医療を確立する目的で、今後も以下の4項目の検討を継続的に行う。 1) 犬のiPS細胞から分化誘導された治療用の間葉系幹細胞の臨床応用に向けた基礎的検討(枝村、鳩谷):本年度は、FACS等を用いて、犬のiPS細胞から間葉系幹細胞への分化誘導効率の高い細胞を分離する手法を試みる。さらに、より分化誘導効率の高い犬のiPS細胞株を作製および探索をする。また、前年度に作製した犬の臨床研究用の無血清培地を用いて培養した間葉系幹細胞の安全性評価を行う。その際には、SCIDマウスおよび正常犬を用いて造腫瘍試験と安全性試験を実施する。 2) 拒絶反応の少ないiPS細胞の備蓄および創生(枝村、塩澤):前年度に続き、拒絶反応の起きにくい犬白血球抗原(DLA)の組み合わせであるMHCホモ接合体の個体を同定し、MHCホモ接合型iPS 細胞を備蓄する。さらに、iPS細胞のゲノム編集技術を用いて、拒絶反応が生じにくい犬のiPS細胞を創生することも並行して行う。 3) 臨床グレードの犬のiPS細胞から軟骨への分化誘導法の開発(枝村):本検討は、前述した犬のiPS細胞由来間葉系幹細胞を用いて実施する。まずは、TGF-β、BMP-2、bFGFなどを含む軟骨分化誘導培地で三次元培養して、軟骨組織の作製を試みる。さらに、人工材料や異種動物由来材料を含む足場を用いずにiPS細胞から基質を有するより大きな培養軟骨を作製する。 4) 臨床グレードの犬のiPS細胞から靭帯細胞への分化誘導法の開発(村田):本検討も、犬のiPS細胞由来間葉系幹細胞を用いて実施する。まずは、bFGF、TGF-β、BMP-12、IGF、PDGFを組み合わせて、最適な靭帯細胞への分化誘導法を検討する。さらに、犬のiPS細胞由来の靭帯細胞または間葉系幹細胞を三次元で積層し、人工材料を用いずに靭帯組織を作製する。
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Research Products
(6 results)