2020 Fiscal Year Annual Research Report
GTPの駆動する増殖ストレス緩和システムの分子基盤の解明
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20H03165
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐々木 敦朗 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任教授 (80620385)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | GTP / がん代謝 / p53 / トランスクリプトーム / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
増殖細胞は、変性タンパク蓄積、オルガネラ機能不全、栄養飢餓に陥りやすくなる。合成亢進にともなうストレスと脆弱性を生体がどのように克服しているのか多く謎に包まれている。これまでの申請者らの解析よりp53変異がんの腫瘍形成に重要な因子としてPI5P4Kβを同定し(Cell, 2013)PI5P4KβがGTPセンサーとしてがん増殖を促進することを報告した(Molecular Cell, 2016)。癌がGTP合成を増大させてGTP濃度が高める仕組みと、増大したGTP合成が癌細胞の同化作用の基盤となることを見出した(Nat Cell Biol, 2019)。PI5P4Kbetaはp53と連関し、GTP濃度が高まる癌や増殖細胞において何らかのストレス応答に重要であると考えられる。しかしながら、PI5P4Kβはイノシトール脂質キナーゼの分野において、黎明期に同定された初期メンバーであるにも関わらず、いまをもって最も謎に包まれたキナーゼである。 現在、癌やシグナル伝達の分野では横綱級の重要分子として知られるclass I PI3Kは、その下流のセカンドメッセンジャー、PI(3,4,5)P3 (PIP3)が、AKTと結合することが分かり、爆発的に研究が進んだ。現在、PI3K経路標的とした様々な疾患治療戦略が可能となっているのは、PI(3,4,5)P3-AKTの経路が明らかとなり、薬効マーカーとしても使用できることが大きい。そこで、PI5P4K研究の壁を突破するべく、PI5Pのシグナル伝達経路について独自に確立したGTP不感知型PI5P4Kbetaを発現する細胞を用いて、トランスクリプトーム解析を行った。同様にプロテオーム解析も行った。その結果、幾つかの候補シグナル経路が浮かび上がり、これらに絞った解析が行える体制となりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
RNAとプロテオームの多層的オミックス解析を、GTP濃度を変化させつつ、時系列に6点のサンプリングを行うことができた。膨大なデータ量を取得することができた。また、ビッグデータの解析についても順調に進んでおり、野生型株とGTP感知機能変異株における相違を反映し、かつGTP濃度変化にも応答するシグナル・代謝経路候補を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた候補経路へフォーカスし、個々の細胞機能に基づいた解析を行うことで検証していく。開発中のPI5P4K阻害剤を用いた検証も行う予定である。また代謝解析についても、行っていくことを予定している。コロナ禍の状況次第であるが、PI5P結合因子の探索と解析についてもすすめる予定である。
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