2020 Fiscal Year Annual Research Report
Fluorescence detection of cellular ability of mismatch repair using synthetic DNA
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20H03184
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩井 成憲 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (10168544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中津 可道 九州大学, 医学研究院, 准教授 (00207820)
織田 信弥 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 腫瘍遺伝学研究室長 (40333372)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミスマッチ修復 / 蛍光プローブ / 遺伝性大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、100塩基対のダンベル型蛍光プローブを設計した。塩基配列は細胞中でのヌクレオチド除去修復の蛍光検出において使用したプラスミドを元にし、両末端をテトラチミジル酸のループでつないだ。そのループと周辺のリン酸ジエステルをヌクレアーゼ耐性のあるフォスフォロチオエートとし、中央にC/Aミスマッチを置いて、そこから十数塩基離れた位置にフルオレセインとダブシルを付けた修飾ヌクレオチドを入れることにした。全体を4本の断片に分け、5'末端をリン酸化した各オリゴヌクレオチドをDNAリガーゼでつないだ後、HPLCで精製して蛍光プローブを得た。また、ミスマッチを含まず異なる蛍光色素を付けたコントロール用のプローブも同様に調製した。これらを用いてLipofectamine 3000によりHeLa細胞のトランスフェクションを行ったが、核での蛍光が観察されなかった。100塩基対では短い可能性があるため、両側に50塩基対ずつの2本鎖DNAを挿入する形で200塩基対の蛍光プローブを設計し直し、8本の断片をつなぐことにより2倍の長さの蛍光プローブ2種類を得た。100塩基対の場合と同様にトランスフェクションを行ったが、蛍光標識した短いオリゴヌクレオチドを用いた場合と比較して細胞への導入効率が大きく低下することがわかった。そこで、一方のループ部分に核局在化シグナルペプチドを付けることにした。末端のヘアピン型DNA断片の中に塩基部にアミノアルキル基を有する修飾ヌクレオチドを入れてSMCCと反応させた後、N末端にシステインを有する核局在化シグナルペプチドと反応させてHPLCで分析・精製し、上記と同様に200塩基対の蛍光プローブとした。それと並行して、市販の核抽出液でミスマッチ修復を検出できるかどうかを調べたが、Santa Cruzの製品ではミスマッチの有無で蛍光強度の増大に違いはなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は以前に蛍光タンパク質遺伝子の発現系を利用した細胞のミスマッチ修復能の蛍光検出に成功したが、これをリンチ症候群の診断のための検査に応用するには二つの問題点があった。一つは、この方法ではミスマッチ修復を検出するためにDNA修復と遺伝子発現の二つの過程が必要であること、もう一つはプラスミドの超遠心による精製が一般的ではないためその経験がなければプローブの調製が困難であることである。そこで本研究では、蛍光色素とクエンチャーを付けた蛍光プローブを用いることにより1段階でミスマッチ修復を検出できるようにすること、そのプローブをクロマトグラフィーにより精製できる形にして調製を容易にすることを目標とした。分析と精製については逆相HPLCを用いることにしたが、200塩基対と長鎖であること、ダンベル型という特殊な形状であること、フォスフォロチオエートの立体異性体(理論的に2^20の異性体が存在する)の混合物であること等の理由により、かなりの困難が予想された。しかしながら、熱変性と段階的な構築、フォトダイオードアレイ検出器の使用など、研究代表者の技術と経験を駆使することにより、ペプチド付きのものを含めて200塩基対の蛍光プローブを調製する方法が確立された。ここまでは十分な成果が得られたが、調製した蛍光プローブを用いてHeLa細胞のトランスフェクションを行うと、少なくとも核局在化シグナルペプチドを付けていないものは細胞への導入効率が極めて低いことがわかった。これは予想外の結果であるが、蛍光プローブがダンベル型という特殊な形状であるためと考えられる。したがって、令和3年度にはこの新たな問題点を解決する方法を見つけなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の結果から、まずダンベル型蛍光プローブを細胞に効率的に導入する方法を見つける必要がある。すでに調製済みの核局在化シグナルペプチドを付けたプローブを試す他、これまで使用していたLipofectamine 3000以外のトランスフェクション試薬やNupherinのようなトランスフェクション補助試薬を用いてみる。ダンベル型DNAが構造的に細胞のトランスフェクションに不適である可能性を考慮し、細胞抽出液を使ったミスマッチ修復の検出についても検討する。令和2年度にはSanta Cruz社の核抽出液を用いたが、DNA修復の研究にも使えるらしいPromega社のHeLaScribe Nuclear Extract, in vitro Transcription Gradeを試し、市販品で良好な結果が得られなければ、研究分担者の織田博士にミスマッチ修復能を保持した抽出液の調製を依頼する。細胞に導入する場合にはミスマッチ修復を開始させるDNA中のニックはヌクレアーゼにより非特異的に生じることが期待されるが、細胞抽出液を用いた場合にはニッキングエンドヌクレアーゼで配列特異的にニックを入れておくことが必要かもしれない。もう一つの方法として、研究代表者がヌクレオチド除去修復の検出に用いたプラスミド型の蛍光プローブで紫外線損傷塩基ではなくミスマッチを入れたものを調製し、それを用いて細胞のミスマッチ修復能の検出を試してみる。これに関しては、新たに研究分担者となった倉岡教授に協力を求めるとともに、遺伝的背景が揃った細胞で実験するために研究分担者の中津博士がMSH2に変異を入れた細胞をゲノム編集により作製し提供を受ける。これらの方策によりミスマッチ修復の蛍光検出を可能にし、応募時に想定していた基礎ならびに応用研究を実施する。
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