2021 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms underlying heterochromatin assembly
Project/Area Number |
20H03189
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
中山 潤一 基礎生物学研究所, クロマチン制御研究部門, 教授 (60373338)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 発現制御 / ヘテロクロマチン / 分裂酵母 / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒストン修飾酵素による高次クロマチン構造の形成と維持の分子機構を明らかにするため、以下の2つの課題を中心に研究を実施した。 【1】ヒストンメチル化酵素複合体の機能解析:分裂酵母のヒストンメチル化酵素であるClr4は、Rik1、Raf1、Raf2、Cul4とともにCLRCと呼ばれる複合体を形成しているが、Clr4がどのように複合体形成に関与しているか明らかにされていない。昨年度までの研究によって、Clr4とCLRCの相互作用にはClr4のSETドメインが関与することを明らかにし、また、Clr4が直接相互作用するCLRCの構成因子を同定することに成功した。本年度はこの成果を更に発展させ、Clr4とCLRCの構成因子の一つとの相互作用には、この因子のN末端の天然変性領域が重要な役割を果たすことを明らかにした。また昨年に引き続き、CLRCの構成因子にタグを付加して発現するようにした細胞株を用いてCLRCのアフィニティー精製を行い、精製法の改良を試みるとともに、精製したCLRCを用いて、ゲル濾過クロマトグラフィーでの挙動を明らかにした。 【2】Clr4メチル化活性の制御機構:先行して実施した研究によって、Clr4のメチル化活性が分子内相互作用によって制御されている可能性が示唆されていた。この可能性を検証するため、昨年度はClr4の各ドメインをリコンビナントタンパク質として発現させ、N末端とC末端が相互作用することを見出した。本年度はClr4の全長をリコンビナントタンパク質として調製し、クロスリンク質量分析を実施することで、Clr4のN末端とC末端の相互作用に関与するアミノ酸残基の候補を特定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒストンメチル化酵素であるClr4が、CLRCの構成要素の一つと直接相互作用し、さらにその結合に関わる領域を同定したことは、Clr4とCLRCの関係の理解につながる画期的な成果であると評価できるため。またClr4のN末端領域とC末端領域が実際に分子内で相互作用することを明らかにし、クロスリンク質量分析で相互作用に関わるアミノ酸残基の候補を同定できたことは、Clr4の活性制御機構の理解につながる着実な進展と考えられるため。同時に並行して実施した、CLRCの構造解析のためのアフィニティー精製について、培養条件を再検討する必要性から計画が少し遅れたが、期間を延ばすことで当初計画した段階までの解析を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
【1】ヒストンメチル化酵素複合体の機能解析については、Clr4が直接相互作用することが明らかになった因子の結合ドメインに焦点を絞り、変異の導入によって相互作用が変化するか検討する予定である。また、分裂酵母からCLRC複合体のアフィニティー精製を進め、複合体の生化学的な特性を明らかにする予定である。【2】Clr4のメチル化活性制御の分子機構については、クロスリンク質量分析によって相互作用に関与していることが示唆されたアミノ酸残基に着目し、変異の導入によって相互作用が変化するかどうか、また相互作用の変化がClr4の活性にどのような影響を与えるか検討する予定である。
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