2020 Fiscal Year Annual Research Report
SAF-A/RNA複合体が作り出す転写制御の場の解明
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20H03190
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
野澤 竜介 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 研究員 (70868710)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | RNA / 転写 / クロマチン構造 / 超解像顕微鏡 / SAF-A |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにSAF-A/hnRNP Uタンパク質は、核内のRNAとともに繊維状のオリゴマーを形成し、転写活性領域におけるクロマチン構造の緩んだ状態を維持する役割を果たすことを見出した。SAF-A/RNA複合体はオリゴマー形成を介して、クロマチン上に構造体を作り出し、その局所に特異的な微小環境を誘導することで、弛緩したクロマチン構造を維持しているのではないかと予想された。 そこで、超解像顕微鏡STORM (stochastic optical reconstruction microscopy)を用いて、SAF-A/RNA複合体の可視化を行った。SAF-Aを蛍光標識し、検出された輝点の核内分布を定量解析したところ、SAF-Aは20-200 nmの大きさのクラスターを形成していることが明らかとなった。さらにこれらのクラスターは互いに連結し、網目状のネットワークを形成していた。一方、細胞に転写阻害処理を行ったところ、SAF-Aのクラスターのサイズは小さくなり、またクラスター同士の連結の頻度が顕著に下がった。この結果は、転写阻害処理が、SAF-A/RNAオリゴマーの形成を阻害するという解析結果とよく一致している。また、核RNAについて、5EU (5 ethynyl uridine)を用いて蛍光標識し、同様にSTORMを用いて核内の分布を解析したところ、5EU処理して30分後に観察される核RNAはSAF-Aクラスターと高頻度で共局在した。さらに核RNAのシグナルもまたネットワークを形成することが観察され、SAF-Aのノックダウンにより、シグナル同士の連結の頻度が顕著に下がった。以上の結果より、SAF-A/RNA複合体は、クロマチン上に網目状の構造体を形成していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STORMを用いた標的タンパク質分子の集合や分散に着目したクラスター解析を立ち上げることができ、計画した実験をほぼ予定通りに実施することができたため。SAF-A/RNA複合体が核内において網目状の構造体を形成することを明らかにできたことは重要な成果であり、この構造体の性質や形成制御を理解することで、転写活性領域のクロマチン構造の維持・制御についての新たな洞察を得ることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
SAF-A/RNA複合体が作り出す網目状の構造体が、どのような生物物理学的性質を持つのか理解することを目指す。特に、SAF-AのC末端側の領域が有する自己集合活性に着目し、精製タンパク質を用いた生化学的解析と、培養細胞を用いた細胞生物学的解析により研究を進める。
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Remarks |
野澤竜介、超解像顕微鏡とクラスター解析機能を用いたRNAポリメラーゼI の局在解析、Nikon Application Note、2020
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Research Products
(11 results)