2021 Fiscal Year Annual Research Report
SAF-A/RNA複合体が作り出す転写制御の場の解明
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20H03190
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
野澤 竜介 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 研究員 (70868710)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クロマチン構造 / RNA / 転写制御 / 超解像イメージング解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の超解像顕微鏡STORM(Stochastic Optical Reconstruction Microscopy)を用いた解析により、SAF-AとRNAの複合体は、クロマチン上で網目状の構造体を形成することが明らかとなった。これを踏まえて2021年度は、SAF-A/RNA構造体の動的な形成制御メカニズムの理解を目指し、その制御タンパク質の同定を試みた。
1)SAF-A/RNA構造体の制御タンパク質を同定するために、ビオチンライゲースタグをSAF-Aに付加し細胞に発現させ、SAF-Aの周囲のタンパク質をビオチン化し、その精製産物に対してプロテオミクス解析を行った。同定されたタンパク質の1つとして、RNAの分解活性を持つExoribonuclease 2 (XRN2)が見出され、これに着目した。RNAiによりXRN2を機能阻害すると、核内のRNAが蓄積し、SAF-A/RNA構造体の形成が亢進した。これらの結果から、XRN2はRNAを分解することで、SAF-A/RNA構造体の形成を負に制御すると考えられた。
2) SAF-A/RNA構造体の動的な性質を理解するために、蛍光標識が可能なSNAPタグをSAF-Aに付加することで、生細胞におけるSAF-Aの挙動を解析した。その結果、転写阻害するとSAF-Aの拡散性が上昇すること、そして転写阻害に加えてXRN2の機能阻害を同時に行うと、SAF-Aの拡散性の上昇が抑制されることが、FRAP (Fluorescent Recovery After Photobleaching )解析より明らかとなった。これらの結果から、SAF-Aの動態は、転写により合成されたRNAと結合することで安定化し、またXRN2によるRNAの分解によって不安定化すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SAF-A/RNA構造体の形成を制御するタンパク質としてXRN2を同定し、それを足がかりにSAF-A/RNA構造体の動的な形成メカニズムの一端を明らかにできたため。XRN2の機能阻害は、転写制御におけるSAF-A/RNA構造体の役割を明らかにするための手立てとして有効であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
XRN2の機能阻害をベースとした解析から、SAF-Aだけではなく、核内RNAの合成と分解の動態もまた見えてきている。今後は、XRN2によって分解されたRNAを追跡し、RNAの分解産物が再び転写反応に用いられ、転写の促進に寄与するかどうかを検証していく。これを明らかにすることによって、転写制御におけるSAF-A/RNA構造体の役割の理解へと繋げたい。
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Research Products
(9 results)