2022 Fiscal Year Annual Research Report
SAF-A/RNA複合体が作り出す転写制御の場の解明
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20H03190
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
野澤 竜介 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 研究員 (70868710)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | クロマチン構造 / 転写 / 超解像イメージング解析 / RNA / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究から、RNA分解活性を持つExoribonuclease 2 (XRN2)は、SAF-A/RNA構造体のRNAを分解し、その形成を負に制御することを見出した。さらにXRN2の機能阻害により、核内にRNAが蓄積し、また転写の変動が引き起こされた。これらの観察結果から、適正な転写制御には、XRN2によるSAF-A/RNA構造体を構成するRNAの分解が重要であることが考えられた。これを踏まえて令和4年度は、SAF-A/RNA構造体やXRN2の転写制御への役割を理解することを目指し、XRN2が寄与するRNAの代謝について検討した。 1) XRN2によって分解されたRNAが新生RNAに取り込まれるかどうかを検討した。ウリジンのアナログである4SU (4-thio-uridine)を含んだRNAを試験管内で合成し、その4SU-RNAをヒト培養細胞にトランスフェクションした。細胞からRNAを調製し、アクチンやGAPDHといったハウスキーピング遺伝子について解析したところ、XRN2依存的な新生RNAへの4SUの取り込みが確認された。 2) XRN2依存的なRNA分解産物の新生RNAへの取り込みについてゲノムワイドに検討した。4SUが取り込まれた新生RNAと、取り込まれていない既存のRNAを、4SUの化学修飾により区別して同定するSLAM-seq (thiol (SH)- Linked Alkylation for the Metabolic Sequencing of RNA)解析を行なった。コントロール細胞では、新生RNAに4SUの取り込みを確認できたが、XRN2をノックダウンした細胞では、有意に4SUの取り込みが減少していた。 これらの結果より、SAF-A/RNA構造体を構成するRNAはXRN2を介してリサイクルされることで、適正な転写に寄与していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
XRN2を介したSAF-A/RNA構造体の転写制御への役割の一端を明らかにできたため。 SAF-A/RNA構造体は、新規に合成されたRNAを蓄えるリザーバーとしての役割を持ち、XRN2を介したRNAの分解により、新たな転写反応に対してRNAのリソースを提供するというモデルが想定された。
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Strategy for Future Research Activity |
SAF-A/RNA構造体は、その局所で進行する転写反応に反応し、RNAをはじめとした転写のリソースを濃縮した微小環境を作り出すことで適正な転写反応を制御すると考えられる。今後は、SAF-A/RNA構造体が転写活性領域にどのような性質をもった微小環境をつくりだすのか、粘性に着目し、分子の動態や、クロマチン構造の制御との関連について検討していきたい。
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Research Products
(9 results)