2020 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫分子STINGのオルガネラ局在に応じた活性制御機構とその破綻による疾患
Project/Area Number |
20H03202
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
向井 康治朗 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (90767633)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自然免疫 / オルガネラ / 小胞体 / ゴルジ体 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然免疫は異物を排除するための先天的に備わっているシグナル伝達経路であり、STING経路はDNAウイルス感染など細胞質DNAに応答する主要 な自然免疫応答経路の1つである。申請者はこれまでに、小胞体膜タンパク質STINGの活性化に細胞内輸送が必須であることを見出し、その活 性化の実体がゴルジ体で起きるSTINGのパルミトイル化であることを発見してきた。一方で、細胞内でSTINGの活性化を負に制御する機構に関しては 未だに不明な点が多く残されている。本研究は、STINGが辿る各オルガネラ上において、STING経路が制御される分子機構を明らかにし、その 機構の破綻に起因する疾患の新規治療法を提案することを目的としている。 本年度では、定常状態でのCOP-I小胞を介したゴルジ体-小胞体間の逆行性輸送がSTINGの小胞体局在維持に必要であることを培養細胞を用いた実験から明らかにし、マウス個体においてこの機構が破綻するとI型IFN応答が恒常的に活性化して自己炎症性疾患となることを見出した [Z. Deng et al., J Exp Med 217, e20201045 (2020).; K. Mukai et al., Nat Commun 12, 61 (2021).]。 )。また、STINGがゴルジ体で活性化した後にシグナルを収束機構させる機構に関して解析を行った。その結果ゴルジ体で活性化したSTINGは、リサイクリングエンドソームを通過したのちにリソソームへ輸送されることを見出した。さらにこのリソソームへの輸送過程に必要な遺伝子を複数同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、COP-I小胞による定常状態のSTINGの不活性化機構に関して重点的に解析を行い、以下の結果を得た。 ・遺伝病型α-COPの発現により、STINGが小胞体からゴルジ体へ局在変化し、TBK1のリン酸化が亢進すること ・Surf4という遺伝子がα-COPとSTINGを繋ぐカーゴレセプター分子の有力な候補であること ・遺伝病型α-COPノックインマウスではI型IFN応答が亢進しており、その表現型がSTING機能欠損マウスとの掛け合わせにより消失すること ・COPA syndrome患者細胞の恒常的なI型IFN応答が、STINGのパルミトイル化阻害剤で抑制できること これら結果は、in vitro、in vivo両面において、COP-I小胞による定常状態のSTINGの不活性化機構の重要性を示唆している。さらに、これらの成果を初年度において2報論文として報告することができたため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究のもう一つのテーマであるSTINGの活性化収束機構に関して重点的に解析を進めていく。具体的には、超解像ライブイメージング解析、電子顕微鏡解析、siRNAスクリーニングを行い、STINGがゴルジ体で活性化した後にどのような経過を辿ってシグナルを収束させているのかを分子レベルで明らかにする。
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