2021 Fiscal Year Annual Research Report
鉄硫黄クラスター生合成マシナリーの反応過程における過渡的な中間状態の解明
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20H03204
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高橋 康弘 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10154874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 啓 宮崎大学, 医学部, 准教授 (80379304)
藤城 貴史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20740450)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 鉄硫黄クラスター / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鉄硫黄(Fe-S)クラスターの生合成を担う3種類のマシナリー(ISC、NIF、SUF)の作動機構の解明に焦点を当てて、遺伝学、生化学、構造生物学、分光学などのさまざまなアプローチを結集して解析を進めている。R3年度の進行状況ならびに研究成果を以下に示す。
1) IscUは、ISCマシナリーにおいてFe-Sクラスターの組み立てを担う中核成分である。このFe-Sクラスターは非常に不安定であるため解析が進んでいなかったが、私たちは、例外的に好熱性古細菌Methanothrix thermoacetophila IscUのFe-Sクラスターは比較的安定性が高いこと、さらに、H106Aというアミノ酸置換を導入すると安定性が向上することを見出した。このタンパク質のX線結晶構造解析に成功し、二量体の会合面に2つの [2Fe-2S] クラスターを集積した、独特な構造を世界に先駆けて決定した。また、溶液中でこの二量体に還元剤を加えると、2つの [2Fe-2S] から [4Fe-4S] へのクラスター変換が起こることを、EPRを用いた分光学的な解析で実証した。これらの知見から、IscUでは、1分子あたりひとつの [2Fe-2S] クラスターを組み立てた後で、2分子が会合して二量体となり、その会合面で2つの [2Fe-2S] クラスターが2電子を受け取って融合することで [4Fe-4S] クラスターに変換される、という大変ユニークなメカニズムが推定される。クラスターの組み立てと変換を担うIscUの構造基盤を明らかにすることができた。
2) 3種類のFe-Sクラスターの生合成マシナリー(SUF、ISC、NIF)の作動機構は大きく異なるものの、いずれもシステイン脱硫酵素によってクラスターの硫黄が供給されている。この脱硫酵素は大きく2つのタイプに分類されている(タイプI: IscSとNifS, タイプII: SufS)が、私たちはそれらの構造と反応機構について詳細に比較解析を進め、共通点と相違点、ならびに多様性と進化的な側面を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IscUの二量体化にカップルしたダイナミックなFe-Sクラスター変換の実体を説き明かしたことで、作動機構に関する重要な知見を得ることができた。研究成果を論文として公表すると共に、進行中のものは学会で発表しており、研究計画は概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
IscUについては、[4Fe-4S] クラスターを安定に保持できるよう種々の変異導入を試し、安定型が得られればEPRなどの分光学的な解析に加えて結晶構造解析により、クラスター変換におけるメカニズムの詳細を明らかにする。
SUFマシナリーについては、大腸菌のSufBC2D複合体に加えて、超好熱性古細菌のSufB2C2複合体の解析を並行して進める。Fe-Sクラスター中間体を保持したホロ型が得られれば、分光学的解析ならびにX線結晶構造解析によって実体を明らかにする。
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