2021 Fiscal Year Annual Research Report
血管収縮を調節するペプチドホルモン受容体の活性化機構の解明
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20H03210
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土井 知子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00397580)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペプチドGPCR / シグナル伝達 / 受容体薬理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ペプチドホルモン受容体ETBの活性化機構解明のために、アゴニスト結合型受容体とGタンパク質との複合体の単粒子構造解析を目指している。これまでに複合体各成分の発現並びに精製系を確立し、複合体形成とその単離を行ってきた。Gi複合体では、ゲル濾過で単離される複合体が安定でなく、徐々に解離しているらしいことが判明した。この問題を克服するために、4残基または2残基のドミナントネガティブ変異をアルファサブユニットに導入したGi三量体の調製を行った。ドミナントネガティブ体は自身の三量体形成効率が野生型の半分程度に減少していた。しかしながら、ドミナントネガティブ体を用いるとETB受容体複合体の形成効率は高く、解離も抑えられている様子が電子顕微鏡の負染色で確認され、現在cryo-EMによる単粒子画像を撮影中である。 Gq複合体においては、界面活性剤ミセル中では受容体との複合体形成効率が50%程度と悪く、受容体をMSP1ナノディスクに入れてから複合体を形成する方法を試みた。受容体を膜環境に置くこの方法では定量的な複合体形成が観察されたが、同時にGタンパクが非特異的にナノディスクに結合して、ゲル濾過で複合体と分離できていないことが判明した。そのためにミセル中での複合体形成を目指し、4残基または2残基のドミナントネガティブGq三量体、miniGs/qアルファサブユニットなどの発現精製を行って複合体形成を試みたが、定量的な複合体形成に至っていない。 GPCRの活性化を測定するG protein dissociation assay、アレスチンとの会合性を検定するassayを確立するために、ルシフェラーゼのlarge断片やsmall断片を融合した各種遺伝子を構築中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ETB受容体、ドミナントネガティブ変異Gi三量体、単鎖型抗体の複合体をミセル中で安定に単離する系を確立した。複合体は負染色電子顕微鏡観察によって、ほぼ単分散している粒子像が観察された。cryoEMによる単粒子解析に進むことができ、現在data収集中である。
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Strategy for Future Research Activity |
GqとETB受容体の複合体が安定に単離できていないので、受容体C末側にminiGs/qアルファサブユニットを融合した遺伝子を発現させて、βγサブユニットを加えて三量体にした後に、アゴニストを加えて受容体との複合体を形成する方法を試みる。融合しているために常に近傍に互いの分子が存在することから、解離を抑制できると期待される。さらに、miniGs/qアルファサブユニットはGsアルファを基盤にした構造であるために、複合体を安定化するナノボディーNb35が利用でき、これを発現精製して複合体の単離に使用する。これらの方法が効果的である場合は、ETA受容体についても同様な方法を試みる。ETB受容体では活性構造を安定化するコンセンサス配列NPxxYの7.53位がYでなくLeicineであるために、活性構造が揺らぎ、原子分解能の単粒子解析ができない可能性もある。この場合には、活性化機構における7.53位の配列の影響などをGタンパク活性化やアレスチン相互作用アッセイによって解析する。 ETB-G複合体の単粒子解析ができた場合は、その構造から明らかになる相互作用について、それぞれが活性発現のためにどのような働きをしているのか、どのような構造がGタンパクの選択性に影響するのかなどを、細胞レベルの活性測定法を利用する変異体解析によって検定し、ETA受容体とも比較する。
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