2021 Fiscal Year Annual Research Report
Asymmetric electron transfer in photosynthetic reaction centers
Project/Area Number |
20H03217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石北 央 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00508111)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人工光合成 / 電荷分離 / 水分解酸素発生 / プロトン移動 / 電子移動 / 結晶構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初研究計画の提案「電荷分離のエナジェティクスの解析」は、周到な準備に基づいてなされたことが功を奏した。その理由の一つとして、基礎的な電子移動のエナジェティクスである酸化還元電位を静電相互作用計算に基づいてPbRC, PSIIにおいて完了していた [論文: Chem. Sci. (2018)] ことが、研究の円滑な実施の礎となった。酸化還元電位は電子移動経路対において異なる値を示し電子移動のエナジェティクスは異なることは明らかであったが、電荷分離時の正孔との相互作用を反映できていないものであった。酸化還元電位では電子移動経路間に差はあることは見えたものの、基本的に両経路とも電子移動のエナジェティクスはdownhillであった。一方、電荷分離状態をも考慮したエナジェティクスでは不活性側の電子移動経路のエナジェティクスは完全にuphillとなり電子移動に不利である様が、明確に現れている。非対称電子移動経路の所以(ゆえん)は、PbRCでは極性環境(「極性アミノ酸残基の分布」や「タンパク質形状」の差)の差であるのに対し、PSIIでは水分解触媒部位のD1側への局在、それに伴うプロトン移動経路のD1側への局在に大きく由来するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画の提案「電荷分離のエナジェティクスの解析」は、周到な準備に基づいてなされたことが功を奏した。その理由の一つとして、基礎的な電子移動のエナジェティクスである酸化還元電位を静電相互作用計算に基づいてPbRC, PSIIにおいて完了していた [論文: Chem. Sci. (2018)] ことが、研究の円滑な実施の礎となった。酸化還元電位は電子移動経路対において異なる値を示し電子移動のエナジェティクスは異なることは明らかであったが、電荷分離時の正孔との相互作用を反映できていないものであった。酸化還元電位では電子移動経路間に差はあることは見えたものの、基本的に両経路とも電子移動のエナジェティクスはdownhillであった。一方、電荷分離状態をも考慮したエナジェティクスでは不活性側の電子移動経路のエナジェティクスは完全にuphillとなり電子移動に不利である様が、明確に現れている。非対称電子移動経路の所以(ゆえん)は、PbRCでは極性環境(「極性アミノ酸残基の分布」や「タンパク質形状」の差)の差であるのに対し、PSIIでは水分解触媒部位のD1側への局在、それに伴うプロトン移動経路のD1側への局在に大きく由来するものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
光合成反応中心タンパク質群では、長距離電子移動経路により電荷分離を可能とし、水分解等の物質エネルギー変換を行う。紅色光合成細菌の反応中心 (photosynthetic reaction centers from purple bacteria: PbRC)、水分解・酸素発生型酵素 photosystem II (PSII) では、分子内空間に対称配置される2つの電子移動経路のうち特定の一方のみで電子移動を行いType II反応中心と呼ばれる。一方で、PSIと共にZ-scheme機構で光合成を担うphotosystem I (PSI)や近年構造が解かれた緑色硫黄光合成細菌の反応中心 (photosynthetic reaction centers from green sulfur bacteria: GsbRC)やヘリオバクテリア由来の反応中心 (photosynthetic reaction centers from heliobacteria: HbRC)では両方の電子移動経路で電子移動を行いType I反応中心と呼ばれる。本研究では量子化学的手法、静電相互作用計算、分子動力学的手法との理論化学的手法を駆使してタンパク質内電子移動機構を解明する。特に、2021年に応募者らが開発した手法による電子ドナー・アクセプター分子間の電子移動カップリングの解析を加え「どのような因子の差によって、タンパク質環境内の空間で電子移動経路が決まるか」その選択原理を解明する。
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Research Products
(36 results)