2020 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜張力と膜タンパク質機能の関連解明に向けた基盤実験技術の創成と応用
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20H03219
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岩本 真幸 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (40452122)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生体膜 / チャネル / 張力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞膜張力による膜タンパク質機能への影響を解析する実験プラットフォームの開発、および、それを応用した典型的イオンチャネル・KcsAの1分子機能解析を目的とする。本年度は膜張力制御が可能な人工細胞膜実験プラットフォーム開発を進めた。従来の膜張力解析では、その都度数秒間の膜電位パルスの印加が必要であり、短い時間間隔で張力値を得ることはできなかった。そこで、脂質単分子層に覆われた油中水滴バブル同士の接触面に脂質二重膜を形成させる開発ベースの人工細胞膜法(CBB法)の特徴を生かし、Young-Laplaceの原理を使って膜張力の連続的な解析を目指した。そのためには100 Pa(0.75 mmHg)程度のバブル内圧を正確に測定する必要があり、従来システムに微小圧力計を組込み、油・水圧、毛細管現象を補正の上、バブル内圧を推定して膜張力を計算した。その結果、従来法とほぼ同一の張力値を得られることが確認され、正確に内圧を推定できたと考えられる。バブル内圧測定に加え、バブル径およびバブル間接触角を顕微鏡画像から取得することで、連続的な膜張力モニターが可能となった。現在は、顕微鏡画像解析の精度向上に向けたプログラムの開発を研究協力者とともに進めている。また、開発した実験プラットフォームを使ってKcsAチャネル1分子機能解析を行った。我々は以前、KcsAチャネル活性が膜張力に影響されることを明らかにしているが、今回は膜張力の連続的な変化にKcsAがどのように応答するのかを調べた。驚くべきことに、膜張力の増大期と減少期で、KcsAは張力に対して異なる特性を示すこと(履歴現象)が明らかになった。これはイオンチャネルの新たな分子特性および制御機序解明につながる成果であり、JACS Au誌への掲載が決まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画の第1段階である人工細胞膜実験プラットフォームの主要部分を完成させることができた。さらに、それをKcsAチャネルに応用し、イオンチャネルの分子特性に関わる重要な成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験プラットフォームの主要部分は完成したので、今後は高精度なリアルタイム顕微鏡画像解析プログラムの開発を研究協力者とともに進める。KcsAチャネル機能解析については、開発した実験システムを活用し、本年度明らかにしたゲート開閉特性への膜張力への影響に加え、イオン透過性・選択性への影響の検討を行う。また、脂質二重層の各単分子層に異なる張力を発生させ(非対称張力膜)、KcsAチャネル活性への影響を検討する。この結果を参考に変異体作成部位を決め、張力感受性を決めているアミノ酸残基の特定につなげたい。
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