2021 Fiscal Year Annual Research Report
Structural basis for alternating access mechanism of ABC multi-drug pump in lipid membrane
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20H03222
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 博章 京都大学, 薬学研究科, 教授 (90204487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
潘 東青 京都大学, 薬学研究科, 助教 (50710787)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トランスポーター / 多剤耐性 / 膜タンパク質 / CryoEM / X線解析 / ATP / 立体構造 / 構造薬理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.CmABCB1の基質結合部位の解明:好熱性真核生物Cyanidioschyzon merolae由来のABC多剤排出トランスポーターCmABCB1と輸送基質との化学量論的な複合体を調製し基質の結合様式を明らかにすることを目指した。その結果、2分子の基質アナログが1分子のCmABCB1に結合している姿をX線結晶構造解析で捉えることに成功した。 2.交互アクセス構造変化の途中状態の捕捉と構造決定:2020年度までに実施したX線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAを利用した連続フェムト秒X線回折実験(SFX)の結果を解析し立体構造を決定した。すなわち、200マイクロリットル程度の微結晶混合液を液体ジェット式の供給器に装填し連続的に流し、そこへ30Hzで10フェムト秒パルスレーザーX線を照射することで、ランダムな方向に向いた個々の微結晶からの回折像が得られたことから、その構造振幅を解析し、短寿命の立体構造を決定した。用いた結晶は、ABCトランスポーターとして世界で初めて脂質キュービック相(LCP)法により得られたものであり、結晶混合溶液の粘度が高いことから効率的なSFX実験がABCトランスポーターで初めて可能になった。 3.リン脂質がトランスポーターに果たす機能調節メカニズム解明:ABCトランスポーターをナノディスクに挿入し極低温電子顕微鏡を用いた単粒子解析(CryoEM)法を用いてABCトランスポーター分子の立体構造の解明を試みた。その結果、CmABCB1と、真菌症の病原菌Candida albicans由来のABC多剤排出トランスポーターCdr1pの立体構造決定に成功した。CmABCB1については、内向型と外向型両状態の立体構造を同一条件で調製した脂質ナノディスク試料より得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.CmABCB1の基質結合部位の解明: CmABCB1に導入したCys残基と共有結合を形成し状態を安定化して化学量論的な複合体を結晶化することで、初めてCmABCB1に結合した基質類似物の分子構造を決定することに成功した。基質アナログの結合状態には多様性が観測されたことから、多剤排出トランスポーターでは、酵素のように1つの立体配座のみを特異的に捉えるのではなく、多様な立体構造を過渡的に捉えることで多様な化合物を効率的に排出しているものと考えられた。 2.交互アクセス構造変化の途中状態の捕捉と構造決定: X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAを利用した連続フェムト秒X線回折実験(SFX)により、短寿命の立体構造の決定を可能にできた。また、ABCトランスポーターとして世界で初めて脂質キュービック相(LCP)法により従来よりも分解能に優れた結晶を調製することに成功した。これにより、ABCトランスポーター反応の途中状態を解析する手法が確立できたことは学術的意義が大きい。 3.リン脂質がトランスポーターに果たす機能調節メカニズム解明:電子顕微鏡による単粒子解析(CryoEM)での立体構造解析に成功した。これにより、ナノディスクを構成するリン脂質組成を変更することで、ABCトランスポーターが異なる組成のリン脂質膜中において特異的な反応挙動を示すことの立体構造基盤の解明に道が開かれた。
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Strategy for Future Research Activity |
CryoEMを用いることにより、これまでX線結晶解析では不可能だったリン脂質の組成の違いがABCトランスポーターの立体構造と機能に及ぼす影響を高分解能で解析することが初めて可能となった。これによってATPや輸送基質の結合した状態についても、CryoEMを用いることで立体構造解析が可能になったことは大きな前進であり、今後は、CryoEM解析に集中することにより、これまで構造決定が不可能だった、反応途中状態の立体構造を順次解析する予定である。さらに、界面活性剤ミセル中の構造についてもCryoEMで決定し、脂質中の立体構造との違いを明らかにすることで、真に結晶中の立体構造とリン脂質膜中の立体構造の違いを議論することが可能になるものと期待される。
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Research Products
(6 results)