2020 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙飛行士の血漿中核酸エピゲノム解析による宇宙環境応答の統合評価
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20H03234
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村谷 匡史 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50730199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 智 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50271896)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 宇宙環境 / リキッドバイオプシー / RNAシークエンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
血液中には体内の細胞から放出された核酸(DNA、RNA)が循環しており、比較的容易に検体が採取できることから、疾患や生体応答のモニタリング法として利用できる。本研究では、この手法を宇宙飛行士の参加する臨床研究に応用し、宇宙環境における体内組織の変化を調査している。同様の手法はこれまでにマウスを用いた宇宙フライト実験でも行われており、その過程で得られた知見をヒトでも確認できると期待される。宇宙滞在中に起きる筋萎縮や骨量の減少など、ヒトの老化と共通した現象の分子メカニズムの解明につながる可能性がある。 これまでに宇宙飛行士から採取された検体を受け取り、異なる解析に用いるための分注作業、RNA精製とRNA量・品質確認により、本研究の解析を進めるために十分な量と質の血漿検体が得られたことを確認した。全ての被験者・タイムポイントの血漿検体についてRNA精製を行い、RNAシークエンスデータを取得した。遺伝子ごとの定量解析により、6名の被験者間で揃ったデータ品質を確認できた。地上、宇宙、帰還後の検体間の比較により、宇宙滞在中と期間後に特徴的に変化する遺伝子群を特定できた。 バイオインフォマティクス解析手法についても、他のデータベース情報との比較方法を、マウスデータも用いて評価した。これらの結果をもとに、JAXAおよびNASAのマウスフライト実験やNASAのTwin Studyにおける宇宙環境応答のより詳しい解釈を行っている。将来的に宇宙飛行士から直接サンプリングできる検体は血液など、ごく限られており、オミックス解析手法の標準の決定と運用を国際的に協力するための枠組みをNASA、ESA等の研究者らと構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していたRNA解析については、宇宙環境応答に関する応答遺伝子群を見出すために十分なデータが取得できた。PCA解析により、外れ値となる検体が少数あったが、タイムコースに沿った検体採取などもあり、宇宙環境応答の評価には問題はないと思われる。マウスデータの再解析において、NASAデータを用いた解析結果の一部について「概日リズムの非同期」に関してまとめ、論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAシークエンスデータについては、マウスデータとの比較も含めたインフォマティクス解析を進めるとともに、DNAメチル化解析を進める。これにより、組織特異性の強いRNAの発現プロファイルとDNAメチル化評価による血漿中の細胞外核酸の由来組織種の推定を行う。また、マウス実験の未発表データに関しても、引き続きヒトでの血漿中RNAの変化、バイオマーカーや分子応答メカニズムと関連付けながら統合解析を行い、論文化を進める。
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Research Products
(7 results)