2020 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的ショウジョウバエ変異体リソースによる高次ゲノム機能解析
Project/Area Number |
20H03246
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
近藤 周 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 助教 (90408401)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ショウジョウバエ2番染色体に存在する約5,000の遺伝子について、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いてノックアウト変異体を網羅的に作成し、その表現型解析を通して遺伝子機能を明らかにするものである。2020年度は、2番染色体左腕(2L)の全2,400遺伝子についてゲノム編集実験を完了し、1,800遺伝子についてノックアウト変異体を得ることに成功した。また、2番染色体右腕(2R)のゲノム編集を行うためのgRNA発現系統を1,800遺伝子について作成した。gRNA系統は次年度以降のノックアウト実験に使用する。 変異体はまず致死性と稔性を検討した。その結果、全体の25%の遺伝子が研究室内での飼育環境において生存に必須であることが明らかになった。残りの非必須遺伝子の変異体では、5%の遺伝子がオス不妊、2.5%の遺伝子がメス不妊であった。 非必須遺伝子は、行動や代謝などの高次機能における役割を検討した。これまでに、高温忌避に異常が生じる遺伝子、低栄養状態で致死になる変異体を複数得ることに成功している。高温忌避に異常がある遺伝子については、GFPのノックインによる発現パターン解析を行い、そのほとんどが神経系で特異的な発現を示すことがわかった。更に、GCaMPを用いたカルシウムイメージングにより、いくつかの遺伝子について、高温により誘導される感覚神経内でのカルシウム濃度上昇の異常を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異体の作成及び解析は順調に推移しており、研究期間内に2番染色体遺伝子の70%はノックアウトを作成できる見込みである。また、研究代表者による表現型解析から、これまでに知られていなかった表現型を示す新規遺伝子が多数得られており、今回作成したリソースが、ショウジョウバエのゲノム機能解析に極めて有効なリソースとなることが示された。研究協力者による変異体解析も順調に進んでおり、複数の論文が投稿中ないしは投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、2番染色体右腕のノックアウトを進めていくと共に、得られた変異体の表現型解析を並行して行う。初年度に発見された新規遺伝子については、発現パターン解析や詳細な表現型解析を行い、その生理機能を明らかにする。 2021年4月より、研究代表者は国立遺伝学研究所から東京理科大学へ異動し、新規に研究室を立ち上げた。今後は国立遺伝学研究所と緊密に連携しつつ、リソースの開発とコミュニティへの提供を行っていく。
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