2020 Fiscal Year Annual Research Report
RhoGEF, Soloとケラチン繊維による細胞の機械刺激に対する順応機構の解明
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20H03248
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大橋 一正 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (10312539)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクチン骨格 / RhoGEF / 力覚応答 / 中間径フィラメント / 上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
FK506-binding protein (FKBP)がラパマイシンを介してFKBP12-rapamycin associated protein (FRB)と結合することを利用した人為的分子間相互作用の誘導方法を用い、LARGの活性型変異体にFRBを結合させたものとカドヘリンにFKBPを結合させたものを発現するMDCK細胞を樹立した。この細胞は、ラパマイシンの添加により細胞間接着部位でRhoAが活性化され収縮する。この収縮細胞を親株であるMDCK細胞と混合して培養し、ラパマイシンを添加したところ細胞が十分に収縮しなかった。そのため、同時に作製していたFKBPを細胞膜に局在させた細胞を用いたところ、この細胞は収縮して隣接するMDCK細胞を引張する様子が観察された。この実験方法を用いて引張された細胞間接着部位の状態を解析し、張力が負荷されたαカテニンを認識するα18抗体によるシグナルの増加、細胞間のミオシン軽鎖のリン酸化の上昇、アクチン繊維の集積、張力が負荷された細胞間接着部位に集積することが報告されているp114RhoGEFの集積が確認された。これらの結果より、人為的な細胞間への張力負荷の実験方法が確立できたと判断した。また、Soloの相互作用蛋白質についてBioID法によるプロテオーム解析を進め、細胞膜骨格に結合する裏打ち蛋白質やモーター蛋白質を新たな候補として同定した。また、生細胞においてSolo蛋白質とケラチン8/18繊維の動態を観察し、Soloの局在がケラチン繊維の束化や集合に深く関わることが明らかになった。また、GFPをセンサーとする張力感知プローブの開発について、目的の部位にランダムに変異を導入したライブラリーを作製することができた。これらの成果をもとに、次年度の計画を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の推進に重要な実験方法として計画した人為的に上皮細胞の細胞間接着部位へ張力を負荷する方法がほぼ確立できた。しかし、収縮のする細胞の収縮率が不安定なため、今後、条件の最適化が必要である。この方法に用いる上皮細胞として、蛍光蛋白質によってアクチン骨格、ケラチン繊維、SoloなどのRhoGEFを可視化することができる細胞株を既に樹立しており、次年度でこれらを用いた解析を進めて行く。Soloと相互作用する蛋白質のプロテオーム解析による網羅的探索も進み、新たな候補蛋白質が見出された。現在、これらの蛋白質とSoloの結合の解析などを進めている。次年度にLC-MS/MS解析が可能になるため、この成果で得たノウハウをもとに、細胞の力学的環境に依存したSoloとケラチンのインタラクトーム解析の準備も進めている。また、GFPをセンサーとする張力感知プローブの開発について、蛍光蛋白質はGFP由来のVenusを用いることとし、変異はN末端とC末端の5-7残基をランダムに変異させることにした。これまでに、この変異を持つVenusをグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)の融合蛋白質として大腸菌に発現させたライブラリーを作製した。今後、このライブラリーを展開して熱感受性変異体をスクリーニングする予定である。以上のとおり、本年度の計画に従って研究を進め各課題の目標をほぼ達成しているため、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. CTENとSoloによる張力負荷分布の生細胞内での可視化:収縮細胞を用いた細胞間接着部位への人為的な収縮力の負荷の実験について、安定して張力を負荷できるように条件を最適化する。この方法を用い、CTENやSoloの局在が張力負荷部位のマーカーとして用いることができるか検証する。 2. 張力感知プローブの開発:張力センサーとするためにGFP (Venus)の分子内で張力が負荷されると予想される部位にランダムな変異を導入した。これらをグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)の融合蛋白質として大腸菌に発現させたライブラリーを作製した。蛍光を発する変異体は100~1000クローンに一つ程度であり、蛍光をもつクローンについて熱安定性を指標に1次スクリーニングを行う。野生型よりも低い温度で蛍光を失う変異体が得られた場合、E-カドヘリンの細胞内ドメインに組み込み、上記の細胞間接着部位の引張実験にて張力感知プローブとしての機能を検証する。 3. 張力負荷依存的にSoloとケラチン8/18繊維に結合する蛋白質の探索:Soloに対するプロテオーム解析は進んでおり、いくつかの候補蛋白質を見出している。今年度より、LC-MS/MSによる網羅的なプロテオーム解析が可能となった。LC-MS/MSは、細胞の条件の違いによる相互作用蛋白質の変化を網羅的に解析することが可能であるため、Soloおよびケラチン8/18繊維についてROCK阻害剤などで細胞内のアクトミオシンの収縮力を消失させた場合に結合が変化する蛋白質を探索する。力負荷依存的にケラチン8/18繊維に結合する分子は張力センサーである可能性が高く、Soloに結合する分子はSoloのフィードバック制御を行う分子である可能性が高い。次年度は、これらの候補蛋白質の同定を目標とする。
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Research Products
(9 results)