2021 Fiscal Year Annual Research Report
RhoGEF, Soloとケラチン繊維による細胞の機械刺激に対する順応機構の解明
Project/Area Number |
20H03248
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大橋 一正 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (10312539)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アクチン骨格 / RhoGEF / 力覚応答 / 中間径フィラメント / 上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラパマイシンを介する化学誘導二量体形成法による人為的に収縮するイヌ腎上皮MDCK細胞を用い、Soloを恒常的に発現させた同じMDCK細胞の引張実験を行った。その結果、Soloが細胞間接着部位へ集積する様子が観察された。また、YFP-ケラチン8を恒常的に発現させてケラチン8/18繊維を可視化したMDCK細胞にmcherry-Soloを二重に発現するMDCK細胞を樹立し、タイムラプス観察を行ったところ、Soloが集積する細胞基底部にケラチン繊維が集積する様子が観察された。これに対して、Soloの発現抑制した場合、ケラチン繊維の集積が抑制される傾向が観察された。これらの発見から、Soloは、収縮力発生部位にケラチン8/18繊維束を集積させる束化活性を持つことが強く示唆された。ケラチン繊維束の細胞内配置は、細胞内の力学環境の恒常性の維持に重要であることから、Soloは、その適切なケラチン繊維網の形成に寄与している可能性が強く示唆された。この分子機構の解明のため、Soloとの相互作用蛋白質をBioID法とLC-MS/MS解析を組み合わせたプロテオーム解析を行い、多数のSolo相互作用蛋白質の候補を同定した。その中に、ケラチン繊維と結合するプラキン蛋白質や細胞-基質間、細胞間接着構造の蛋白質が含まれていた。さらに、Soloの局在について解析を進め、細胞間接着部位への集積にデスモソーム構成蛋白質が必要であることを見出した。また、テンションセンサープローブについては、センサーとなる温度感受性GFP変異体のスクリーニングを開始し、いくつかの変異体を得た。さらに、これをカドヘリン分子内に挿入して解析する実験方法を確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内の力負荷分布の可視化について、CTENとSoloをマーカーとして検討した結果、CTENは張力分布のマーカーにならないことが判明した。Soloは、細胞内の収縮力の発生部位に局在することが明らかになったため、マーカーとして機能する可能性が示唆された。また、Soloとケラチン8/18繊維網の生細胞内の動的な変化の相関をタイムラプス観察により行い、ケラチン繊維束がSolo依存的に集積することを見出した。Soloと相互作用する蛋白質のプロテオーム解析は、BioID法とLC-MS/MSによって再度行い、中間径フィラメントに関連する蛋白質、アクチン骨格、膜骨格、細胞-基質間、細胞間接着構造に関係する蛋白質を多数見出した。さらに、細胞間接着構造の構成蛋白質の発現抑制による解析を行い、Soloの細胞間接着への局在に関与する候補を同定した。細胞への張力負荷依存的にSoloとケラチン繊維に結合が変化する蛋白質の探索については未だ着手できていないが、プロテオーム解析の手法を確立できたことから実行する準備は整った。張力感知プローブの開発については、蛍光蛋白質VenusのN末端とC末端部位にランダムな変異を導入し、これらをGST融合蛋白質として大腸菌に発現させたライブラリーを作製し、温度感受性の変異体のスクリーニングを開始した。これまでのスクリーニングによって温度感受性変異体を5種類得た。さらに、E-カドヘリンの分子内にその変異体を挿入したキメラ蛋白質を作製し、上皮細胞に発現させて細胞間接着部位の張力によって蛍光輝度が変化するものを探索する方法を確立した。未だ有効な張力感知プローブは得られていないが、プローブのスクリーニング方法は作製できた。以上、計画した項目のほとんどは実行しており、目的の結果も得られていることからおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.細胞内の張力マーカーの開発:Soloの細胞内局在と細胞内の張力、収縮力の空間的な発生部位の相関を、細胞-基質間接着部位の力負荷分布を可視化する既存の方法を用いて解析する。共同研究によりDNAフォースセンサの技術を導入し、細胞基底部の張力分布とSoloの局在の相関を解析する。この解析により、Soloの局在が細胞内の張力、又は、収縮力発生部位を可視化するマーカーとして利用できるかを検討する。 2.張力負荷依存的にSoloとケラチン8/18繊維に結合する蛋白質の探索:ケラチン8のBioIDプローブを発現する細胞を樹立する。これとSoloのBioIDプローブ発現細胞について、ミオシン阻害剤を添加した場合に変化するビオチン化蛋白質を同定する。同定された蛋白質をMDCK細胞で発現抑制し、これまでに作製した収縮細胞を用いて張力を負荷したときのアクトミオシンの増強、ケラチン8/18繊維網の再構築に対する影響を解析し、メカノセンサーとして機能する可能性を検証する。 3. Soloを介したケラチン8/18繊維網の再構築による順応機構の解明:前項で細胞への張力負荷に依存してSoloと結合する蛋白質について、収縮力の発生部位にSoloを集積させる蛋白質を同定する。同定した蛋白質をMDCK細胞で発現抑制し、収縮細胞を用いた張力負荷に対する応答への影響を解析する。これらの解析から、Soloの局在量が負荷された張力の強さを感知するフィードバック機構として機能する可能性を検討する。これらの解析を通して、アクチン骨格とケラチン繊維網の再構築による細胞の力負荷に応じた順応機構を解明する。 4.張力感知プローブの開発:Venus変異体のスクリーニングの規模を大きくして温度感受性変異体を探索し、得られた変異体の中から張力感知プローブとして機能するものを動物細胞のモデルを用いて選定する。
|
Research Products
(4 results)