2021 Fiscal Year Annual Research Report
オルガネラコミュニケーションの破綻による神経変性疾患の発症機構
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20H03255
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
白根 道子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (90398082)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オルガネラ |
Outline of Annual Research Achievements |
皮質脊髄路は随意運動を担う神経回路で、中枢神経系の中で最も長い軸索を有する。遺伝性痙性対麻痺(HSP)は、皮質脊髄路の運動神経が損傷する軸索変性症である。その主な原因としてヘアピンドメインを有する一群の小胞体(ER)膜構造制御タンパク質 の不全がよく知られているが、さらに近年、ERと後期エンドソーム(LE)間の膜接触部位(Membrane contact sites、MCSs)の関連が示唆されている。近年、高解像度光学技術の開発とMCSs繋留タンパク質の相次ぐ発見によりMCSs研究は急速に進展しているが、その個体における生理機能には未知の部分が多い。そこで本研究で、ER膜構造とER-LE MCSsが、神経細胞の恒常性維持にどのように関与しているのか、分子レベル・細胞レベル・個体レベルで明らかにし、軸索変性の発症機構の解明に繋げることを目標とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の実験を実施し、目的の結果を得て論文に発表できた。 (1)MCSs形成能(Split-GFP):Split-GFPはGFPが2分子に分断されたもので、片方はER、もう片方はLE移行シグナルが付加されており、MCSsで両者が発現すると蛍光を発する。細胞間の発現量補正のため、共発現させたmCherry蛍光に対するSplit-GFP蛍光の比を統計的に解析した。 (2)脂質輸送活性(リポソームFRETシステム):GSTリコンビナントタンパク質とリポソームを用いて脂質輸送活性を測定した。供与リポソームにRhodamine-PEとNBD-lipidを混合しておくと、両者の近接によるFRETによりNBD蛍光は消光する。そこへ脂質輸送タンパク質を添加すると、受容リポソームへNBD-lipidが分散するためFRETが解消しNBD蛍光が検出され、その蛍光強度が脂質輸送活性を反映する。 (4)オルガネラ動態のイメージング( TEM, FIB-SEM):透過型電子顕微鏡TEMにより、オルガネラ接触状態を観察した。さらにFIB-SEM(集束イオンビーム・走査型電子顕微鏡)により、オルガネラ同士の接触や形態を3Dトモグラフィー解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
変異マウスの個体解析を実施中で、期間内に以下の実験を進める。 MCSsの個体における生理機能(変異マウスの神経系解析)予備的研究により作製済みのER-LE MCSs複合体因子の変異マウスを用い、初代神経細胞や神経系組織のイメージング解析を行い、オルガネラ形態や神経細胞極性や神経細胞内輸送について異常がないか調べる。特にMCSsの面積や軸索変性やマウス歩行に注目して観察する。
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Research Products
(2 results)