2020 Fiscal Year Annual Research Report
上皮形態形成における組織形状と細胞分化の調和機構の解明
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20H03258
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 武史 京都大学, 生命科学研究科, 特定助教 (60565084)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 上皮形態形成 / 細胞運命決定 / 形態形成フィードバック / 1細胞RNA-seq / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
機能的な器官の構築には、適切な細胞分化と秩序立った形態形成の両者の調和が必要である。本研究では、ショウジョウバエ気管形成をモデルとして、ライブイメージングや1細胞RNA-seqの手法を駆使してその調和メカニズムを明らかにすることを目的としている。当該年度は、時系列1細胞RNA-seqによる気管細胞分化ダイナミクスの解析を進めた。気管陥入前後の複数の発生タイミングのショウジョウバエ胚を対象として1細胞RNA-seqを行い 、各細胞の遺伝子発現情報を取得した。そして、遺伝子発現を基準としてそのデータから気管細胞データを抽出し、RNA velocityを用いた擬時系列解析により気管原基細胞の分化ダイナミクスを遺伝子発現情報のみから推定した。その結果、これまでの知見に反して、気管の複数の分岐のうち、最も表皮に近い場所に位置するSpiracle branch (SB)が、他の気管細胞とは異なるタイミングとメカニズムで分化すること、このSB細胞の分化過程では気管マーカー遺伝子と表皮マーカー遺伝子の発現がダイナミックに変動することが示唆された。この結果から、特にSB細胞系譜の分化過程において、形態形成のダイナミクスに依存して遺伝子発現がダイナミックに変化している可能性が考えられた。 さらに、Llama-tagシステムを用いて気管分化のマスター転写因子をコードするtrh遺伝子のタンパク質発現のダイナミクスをライブイメージングにより解析した。その結果、Trhタンパク質は原基で発現したものが陥入した気管で維持され、陥入せずに表皮に留まった細胞では徐々に消失してくことが明らかになった。1細胞RNA-seqの結果と合わせると、特定のタンパク質の発現パターンの解析のみでは見過ごされてきた転写ダイナミクスにより、組織形状変化に依存した細胞分化の制御がされていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた時系列1細胞RNA-seqを遂行し、気管原基細胞が気管または表皮細胞へ分化する過程のダイナミクスを遺伝子発現情報から推定することに成功した。また、詳細なデータ解析により、予想していなかったSB気管細胞の新たな分化プロセスも見出すことができた。 また、Llama-tagシステムによりTrhタンパク質の発現ダイナミクスも明確になった。陥入終了後に表皮に留まった細胞でのみTrhタンパク質の発現が徐々に消失することが明らかになったが、これまでの知見と1細胞RNA-seq解析の結果を合わせて、組織形状変化に依存した細胞分化の制御は主に転写レベルの制御でなされていることが強く示唆された。このことは今後の研究の方針を定める上で重要な進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでのコントロール胚に加えて、気管の陥入運動に異常を示す変異体においても1細胞RNA-seqの解析とライブイメージングによるtrh遺伝子発現ダイナミクス、特に転写ダイナミクス及びmRNA発現ダイナミクスに注力した解析を進める。それらのデータを統合的に解析することで、気管原基細胞が組織形状変化に応答するタイミングについての共通したルールを見出すことを目指す。 また、気管マーカー遺伝子であるtrhに加えて、表皮マーカー遺伝子やSB特異的遺伝子の発現ダイナミクスも形態形成ダイナミクスに対応させて理解する必要が出てきた。そのため、ゲノム編集技術によりそれら遺伝子に対するLlama-tag及びMS2-tagのノックイン系統の作製も進める。
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Research Products
(1 results)