2021 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms and roles of the quality control of epiblast during its formation in mouse embryos
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20H03261
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐々木 洋 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (10211939)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 着床前胚 / 細胞競合 / エピブラスト / 細胞死 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス着床前胚のエピブラスト形成時の細胞競合について以下の研究を行った。まず、分子機構の解析のために、昨年度実施した1細胞RNAseqの結果から明らかになった敗者細胞で活性化されているシグナル経路や候補因子について、それらの細胞競合への関与を胚の薬剤処理や受精卵へのゲノム編集による遺伝子破壊を用いてF0胚で解析した。その結果、Trp53欠損胚において、後期胚盤胞期胚のエピブラスト細胞数の増加とエピブラストにおける多能性因子SOX2の発現レベルの低下がみられた。この結果は、Trp53がSOX2遺伝子の発現の低い敗者細胞の排除に関与していることを示唆している。その一方で、Trp53欠損胚では、カスパーゼ阻害剤処理により細胞死を抑制した場合に多くみられるエピブラストの転写因子SOX2と原始内胚葉の転写因子SOX17の両方を弱く発現する分化途中の細胞は2割ほどの胚でしか見られず、また、分化した細胞の配置の乱れもほとんどなかった。Trp53欠損胚の表現型がカスパーゼ阻害に比べて弱いのは、Trp53欠損胚ではカスパーゼより上流で細胞死を止めるため、敗者になる分化途中の細胞が細胞死を起こさずにエピブラストへと分化を進め、弱くSOX2を発現するエピブラスト細胞になったためと考えられる。 また、細胞競合の役割を解析するために、昨年度作成した薬剤投与によりアポトーシス抑制因子BCL2を誘導できるトランスジェニックマウス系統を用いて、妊娠マウスの胎生3.5日まで薬剤投与を行い胎生6.5日の着床後初期胚を回収した。その結果、低頻度でエピブラストの過形成による胚形態の乱れを示す胚が得られた。この結果は、細胞競合の重要性を示すものであるが、詳細な解析から着床前胚のBCL2の発現が不十分であることが明らかになり、現在、この問題点を解決するための新たなトランスジェニックマウス系統の作成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞競合の敗者細胞の排除にTrp53の関与を明らかにできた。また、予備的な段階ではあるが、細胞競合の発生上の意義に関する知見も得られてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
Trp53の役割をTrp53欠損マウス系統を樹立して解析する。また、BCL2を強く発現するマウス系統を樹立する一方、内在性アポトーシスを起こさないBax;Bak;Bokの3重変異胚を作成し、着床後初期胚において、BCL2による細胞死抑制と同様な発生異常が高頻度でみられるかどうか、解析する。
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