2020 Fiscal Year Annual Research Report
Tackling the global regulation of Hox clusters with molecular evolutionary and epigenomic approaches
Project/Area Number |
20H03269
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
工樂 樹洋 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (40391940)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | Hox遺伝子 / 分子進化学的解析 / オミクス / 全ゲノム情報 / 軟骨魚類 / 円口類 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)脊椎動物のHoxクラスター構造とDNA配列の高密度多種間比較 配列情報の網羅性と信頼性に注意を払いつつ、公表された全ゲノム配列を利用して、Hox遺伝子レパートリのカタログ化に加えて、クラスター長と遺伝子間領域の反復配列頻度(被覆率)とGC含量を測定するとともに、Hox遺伝子以外のタンパク質コード遺伝子やノンコーディング転写産物の有無についても精査した。比較の対象とする種として、伝統的な実験生物、申請者の研究室で独自にゲノム配列を読み取った爬虫類・軟骨魚類に加え、米国NCBI、英国Ensembl、Vertebrate Genomeプロジェクト、DNA Zooプロジェクトによって公表された種を含めた。これらの解析により、HoxAおよびDクラスターは生物を通じて、強い機能的制約下にあり、分子進化速度が遅いこと、そして、HoxCクラスターはとくに生物種によっては分子進化速度が上昇していることが、明らかとなった。なかでも、軟骨魚類のHoxCクラスターは、侵入した反復配列の頻度が非常に高いうえ、GC含量が高く、分子進化速度が上昇していた。本解析の結果の一部は、原著論文(Kadota et al., Sci Rep 2020)で報告したうえ、総説でも紹介した(Kuraku, Dev Biol 2021)。 2)円口類特有のゲノム構築パターンの解析 円口類のHoxクラスターは、例外的に1Mbp長にも弛緩しているなど、脊椎動物の中で例外的な特徴が知られている。初年度は、円口類に属する南半球産ヤツメウナギ2種について、Hi-Cデータを加味し染色体規模の全ゲノムDNAアセンブリを構築した。これを活用し、他の円口類の既知のゲノム情報を加味したうえで、円口類ゲノムに特有な性質についてインシリコ解析を行った。本解析の結果は、出版準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究が停滞を余儀なくされた時期の影響で初年度に遅延があったが、2年目となる令和3年度に挽回し、当初の予定通りにペースを取り戻すことができた。そのため、おおむねに順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに、円口類に属する南半球産ヤツメウナギ2種の全ゲノムDNAシーケンスを進め、Hi-Cデータを加味し染色体規模のゲノムアセンブリを得た。これを活用し、ヤツメウナギとヌタウナギの既知のゲノム情報を加味したうえで、円口類ゲノムについてこれまで議論の対象となってきた、ゲノムの倍数性、GC含量のゲノム内の不均一性、などについて総合的に検証するためのインシリコ解析を行う。 [Hoxコードを導くクロマチン高次構造の解析]本研究でとくに注目する軟骨魚類の胚発生期の生体試料を用いて、クロマチンの高次構造の包括的情報を得る。エピゲノム情報の取得には、主要な発生段階について、まずHi-Cを用いる予定である。対象とする生物のうち、イヌザメは孵化まで4か月と低速で発生し、胚が比較的大型であるために、高い時空間的分解能が期待される。Hi-Cのサンプル調製には、申請者の研究室で最適化したiconHi-C(アイコニック)プロトコルを使用する。ペアエンド150bpのショートリードシークエンスを行い、HiC-Proプログラムによりリードペアの性質の品質を管理する。不良リードペアは除いたうえで、Juicerプログラムなどを用いてクロマチン上のコンタクト頻度を定量する。それをヒートマップに示した、いわゆるクロマチンコンタクトマップを構築し、クロマチン上で近接しているゲノム領域を網羅的に検出する。同一クラスター内だけでなく、クラスター間の相互作用をも見いだすのが究極目標である。
|