2020 Fiscal Year Annual Research Report
緑藻の紫外線応答・耐性の分子基盤から紐解く光合成生物の陸上進出
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20H03282
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
得津 隆太郎 京都大学, 理学研究科, 特定研究員 (60613940)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 紫外線応答 / 水圏緑藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
現存する陸上植物と、その共通祖先に近い緑藻類との大きな違いは乾燥・重力耐性の獲得にあるが、それらは陸上化後に段階的に強化された形質であり、陸上化の第一歩を可能にした要因は分かっていない。植物の陸上化の始まりは5億年ほど前と考えられている。それまでの地球環境の変化に着目すると、酸素発生型光合成の誕生により大気中の酸素濃度が上昇し、オゾン層が形成されたため、生物(核酸)にとって危険な紫外線(UV-B/C)は地表から大幅に減少した。しかし、紫外線全てが排除されたわけではない。そのため、生物が陸上に進出するためには、まず地表・水中まで到達する紫外線(UV-A)への耐性を獲得する必要があったと予想できる。 本研究では「光合成生物の陸上進出(ブレークスルー)の謎に迫るため、水圏光合成生物における紫外線(UV-A)応答・耐性因子を探索する。具体的には、陸上植物と共通祖先を持ち地球上のあらゆる場所に生息する“部分的に陸上化を果たした光合成生物”とも言える緑藻種を用い、その紫外線応答・耐性の分子メカニズムの解明を目的とした。 本年度の実績として、緑藻の紫外線応答遺伝子を指標とした大規模スクリーニング系を構築した。具体的には、サザンブロット法によりゲノム上の耐性マーカー数を確認し、1マーカー/1ゲノムとなる理想的なマーカー導入法を確立し、生物発光を利用した大規模スクリーニングを実施した。また、スクリーニング初期において幸運にも紫外線センサーの発見・同定に至り、その分子生理学的機能について陸上植物と緑藻の間での違いを見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付された研究費に応じて導入した発光検出器の性能が律速となり、予想外に変異体のスクリーニングに時間を要し、得られた形質転換体の数は当初の計画よりも少ない数にとどまることになった。そのため、紫外線応答の不良・過剰応答による変異体クラス分けが未達成となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗状況から、大規模スクリーニングの歩留まりに問題を見出している。そこで、大規模スクリーニングと並行して、紫外線応答に伴うゲノムワイドな遺伝子転写量、転写開始点変化の解析を開始する。本解析では、緑藻野生株における紫外線応答に加えて、これまでに得られた紫外線センサー変異株を含めることで、紫外線応答に特化した転写量・転写開始点変化を示す遺伝子群のカタログ化が可能となる。GO解析、ホモロジー解析等を通じ、これらの遺伝子群の中に着目すべき遺伝子が見出された場合、ゲノム編集による変異体作成、および機能解析を進める。これにより、大規模スクリーニングによる順遺伝学解析と、上記の逆遺伝学的解析を組み合わせた「緑藻の紫外線適応を実現する実因子の発見」を効率的に進める。
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Research Products
(2 results)