2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of systemic control mechanism of nodule development via long-distant mobile signals
Project/Area Number |
20H03283
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
川口 正代司 基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 教授 (30260508)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 根粒形成 / 共生 / 遠距離シグナル伝達 / HAR1 / 葉制御 / microRNA / TML / ミヤコグサ |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 葉から根への遠距離シグナル伝達の解明 (1) 野生型とhar1根粒過剰変異体におけるmiR2111前駆体遺伝子の発現解析 先行研究により、ミヤコグサにおいては3つのMIR2111遺伝子が報告されていた。BLASTとRNA-seqによる遺伝子予測とBLASTnによる類似性検索により未知のMIR2111遺伝子を探索し、さらに新たに4つの新規MIR2111遺伝子(MIR2111-4~MIR2111-7)を特定した。これら7つの遺伝子のうち、MIR2111-2, 4, -5, -7は葉で発現しており、根粒菌の感染によって成熟型「miR2111」の蓄積量はHAR1依存的に顕著に減少した。またそのうちのMIR2111-5は葉で最も強い発現レベルを示し、プロモーターGUSアッセイにより、葉の師部で主に発現している一方、根での発現は検出されなかった。 (2) MIR2111-5の過剰発現とノックアウトによる表現型解 ゲノム編集技術を用いてMIR2111-5の欠失を試みた。欠失系統(mir2111-5)では、葉と根の両方で成熟型「miR2111」の蓄積量が野生型の50%以下に低下した。更に欠失系統では、野生型と比較して根粒数と感染糸数が有意に減少した。「miR2111」の葉からの影響を調べるため、MIR2111-5を過剰発現させた穂木を野生型の台木に接ぎ木した。その結果、野生型の台木では、根粒数と成熟型「miR2111」量が増加し、TMLのmRNA量が減少することがわかった。 2. シュート由来シグナルを根で受容するTMLの分子機能の解明 F-boxタンパクTMLは未知の共生因子を分解することにより、根粒形成を負に制御している。TMLの基質候補遺伝子はミヤコグサのゲノムに3コピー存在していることが判明した。CRISPRによるゲノム編集を行い、変異系統の単離を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
HAR1依存的に葉で最も強く発現するMIR2111-5 が第3染色体のセントロメア領域近傍に座上しており、かつ遺伝子自体が小さいためCRISPRによるゲノム欠失に苦労したが、最終的に遺伝子領域の一部を欠失したラインを2系統単離することに成功した。かつその変異系統でTMLのmRNAの蓄積が上昇するとともに、根粒形成が抑制される表現型を確認することができた。 先行研究では、地上部から根に輸送されるショ糖など有機物が根でMIR2111の発現を誘導する可能性を排除することができていなかった。本研究により、MIR2111を高発現した穂木を野生型の台木に接ぎ木すると、根における根粒数の増加が確認されたことから、地上部に蓄積する「miR2111」のシステミックな根粒形成制御機構を証明することができた。また、7つの前駆体遺伝子の中でもMIR2111-5がAONに寄与する主要遺伝子座であることを明らかにすることもできた。以上の研究は1名の大学院生(大熊直生)が主体的に行った成果であり、2020年10月にNature Communications誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、根粒形成と感染をシステミックに制御するmiR2111のシュートから根への遠距離移行をより詳細に捉えることを目指す。具体的には、microRNAのメタボリズムに関わるHEN1遺伝子をCRISPRでノックアウトすることで、miR2111のderivativesを合成するミヤコグサを作出し、根粒形成の評価を行う。これまで根粒形成に影響を与えるマメ科植物のhen1変異体は報告されていないことから、 目的の変異体が単離されるか否かが鍵となる。
根における共生イベントを地上部の「葉」が感知し遠距離制御する生物学的意義は不明である。また、また、根圏における窒素情報を「葉」に伝達する生物学的意義も不明である。これまで根での根粒菌感染や硝酸処理によって、葉でHAR1依存的に発現変動する遺伝子を多数特定してきたが、さらに発現変動遺伝子の検出精度を高めることによって、AONとは異なるHAR1を介した葉制御の未知の生物学的機能に迫りたい。
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Research Products
(2 results)