2020 Fiscal Year Annual Research Report
Revisiting genetic information: introducing the concept of the collective dynamics of DNA and water
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20H03298
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
今清水 正彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90465930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 真人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (30386643)
徳永 裕二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (80713354)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サブテラヘルツ / DNA / 遺伝情報 / イミノプロトン / RNAポリメラーゼ / 転写開始 / ポージング / アボーティブ転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハイスループットDNAシーケンス測定と溶液NMR法による塩基対イミノプロトンシグナル測定にDavid Lukatsky 氏(ネゲヴ・ベン=グリオン大学)の協力を得て行った統計力学的手法と組み合わせ、大腸菌RNAポリメラーゼによる転写開始時のアボーティブ(不成功)反応とポージングを引き起こす反復配列的特徴をゲノムレベルで明らかにした。転写開始時のアボーティブ反応を促進する反復配列は連続したチミン塩基に富み、転写ポージングを引き起こす配列は塩基の種類に依らない一般的な配列反復要素であり、どちらのシグナルも、転写開始の生産性を低下させることを見出した。さらにイミノプロトンシグナルのNMR観測とin vitro転写測定から、プロモーターDNA内の反復配列要素は、その二本鎖の非局所的な塩基対安定性変化を介して転写開始反応を調節していることが示唆された。この安定性は、水和水を含めたDNAの塩基対水素結合環境や剛性を反映するため、原核細胞だけではなく、転写ポージングを介した一般的な細胞の転写開始調節因子として使われている可能性がある。また、DNAの揺らぎ運動に対して、周期が対応するテラヘルツ(THz)・サブテラヘルツ領域の電磁波照射により摂動を与え、その転写反応への作用を速度論的に解析するためのTHzストップトフロー法を構築した。具体的には高性能マイクロチューブポンプを主体としたポータブル型簡易ストップトフロー部と、THz波が透過する薄型液体試料セル部から成る新システムに、IMPATT ダイオード光源による0.1THz波照射を組み合わせた装置を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生化学・分光学的実験に計算的アプローチを組み合わせ、プロモーターDNA領域における特定の反復配列要素が、その領域のDNA塩基対を非局所的に不安定化させ、RNAポリメラーゼによる転写開始複合体形成に阻害的に働くという転写調節における新概念を得ることができた。また、転写複合体の水素結合ネットワークにTHz・sub-THz波で摂動を与え、反応の時間変化を調べる新手法(THz-ストップトフロー法)の技術的基盤を構築したことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
真核生物でゲノムレベルの解析が進んだc-Myc/Max等の転写因子をモデルとし、in vivoとin vitroの両面から結合アッセイを行い、特定のDNA配列反復性と転写調節の関係を明らかにする。また、反復性とDNAの水素結合ネットワークの関係性を、DNA水溶液の溶液NMR測定、および0.1THz波照射作用の測定により明らかにする。さらにDNAの水和変化を直接観測するため、DNA水溶液の誘電緩和測定を新たに導入する。
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Research Products
(9 results)