2020 Fiscal Year Annual Research Report
From bird calls to human language: exploring the adaptation and evolution of linguistic capabilities
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20H03325
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| Research Institution | Kyoto University |
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Principal Investigator |
鈴木 俊貴 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (80723626)
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| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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| Keywords | 言語進化 / 鳥類 / 構成性 / 指示性 / コミュニケーション / 動物言語学 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
言語の進化を解き明かすことは現代科学における大きな課題のひとつである。ヒトの言語表現は他の動物のコミュニケーションと比べて逸脱して複雑であり、それらの単純な比較から言語の起源や進化に迫ることは難しい。しかし、言語を構成する下位機能に着目すれば、動物を対象とした比較研究も可能となる。
これまでの申請者の研究から、① 特異な音声を用いて対象物を指示する能力（指示性）や ② 異なる音声を組み合わせる文法能力（構成性）が、シジュウカラ科鳥類において独立に進化していることが明らかになってきた。本研究では、認知科学や言語学の観点を取り入れた行動実験や系統情報を考慮した種間比較から、どのような生態的・社会的背景で、これらの言語機能（指示性・構成性）が適応・進化したのか解明することを目的とする。本研究が完成した暁には、言語の進化を生態学的根拠のもと議論することが可能となり、生物学領域に留まらない幅広いインパクトが期待される。
当初の計画では、国内外の複数のシジュウカラ科鳥類種を対象に、言語機能に関する大規模な比較研究を展開する予定であったが、新型コロナウイルス蔓延の影響で、海外への渡航・調査が困難な状況となってしまった。そこで、本研究では、日本国内に生息するシジュウカラ科鳥類５種を対象に、言語機能に関するより詳細な行動実験を行い、本課題を進展させることとした。野外研究において１名のポストドクターを雇用し、共同研究者２名、大学院生１名とも連携しながら野外研究を進めることで、音声の指示性や文法能力（構成性）の種間差、それらをの発達メカニズムについて多くの新しい知見を得ることができた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、（１）日本と中国、スウェーデンに分布する８属16種のカラ類（すべての属を網羅）を対象に行動実験をおこない、（２）指示性や構成性といった言語機能の種間差を明らかにし、（３）その後、系統情報を加味した統計モデリングをおこなうことで、それら言語機能の進化プロセスや要因を明らかにする計画であった。
しかし、新型コロナウイルス蔓延の影響で、海外への渡航・調査が困難となり、データの収集が国内に生息するシジュウカラ科鳥類に限られてしまった。
そこで、国内での野外研究をより詳細なものとし、５種のシジュウカラ科鳥類（シジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラ、コガラ、ハシブトガラ）が各種捕食者に対して発する際にどのような鳴き声を発するのか明らかにすることと、もし音声の組み合わせが見られた場合、単独の音声とその組み合わせ（音列）をどのように使い分けているのか明らかにすることを目的とした。具体的には、調査地に巣箱を仕掛け、それを利用し繁殖した鳥類に対して捕食者の剥製やレプリカを呈示し警戒音声を促す実験や、録音した音声をスピーカーから再生して行動変化を調べることで、音声の認知機構を明らかにする実験をおこなった。
長野県に生息する４種に加え、北海道に生息するハシブトガラも研究対象に加え、調査対象種の数ができるだけ多くなるよう試みた。また、北海道、長野、東京、、京都の４地点での音声収集をおこない、同一種においても音声構造に地理的な違いがみられるのかについても解析をおこなっている。
現在まででの最も大きな進捗は、（１）天敵のアオダイショウを指示する特異な音声がシジュウカラ以外の鳥類種においてもみつかったこと、（２）シジュウカラ科鳥類の中にも状況に応じて音声の組み合わせを使い分ける文法能力（構成性）を持つ種と持たない種がいること、（３）個体間で音声とその意味を教示する様子が見られたことなどが挙げられる。
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| Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の３つの課題について研究を進める。
１）指示性の検証 シジュウカラ科鳥類（シジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラ、コガラ）の繁殖期に野外での行動実験を行う。昨年度までの実験から、これら４種は天敵のヘビ（アオダイショウ）に遭遇すると特異な音声を発して警戒することが明らかになっており、その音声と対応する意味を種内のみならず種間においても学習していることが示唆された。今後は、アオダイショウと音声の関連学習のメカニズムを野外実験によって明らかにする。具体的には、シジュウカラ科各種のつがいや家族群にアオダイショウやその他動物の剥製を複数回呈示し、ある個体が他個体に音声とその意味を教示する過程、それによって知識が伝達されたのかを検証する。
２）構成性の検証 非繁殖期において、シジュウカラ科鳥類を対象に実験をおこなう。上記の通り、昨年度までの研究で、音声を組み合わせてより高次なメッセージを伝える文法能力（構成性）はシジュウカラ科鳥類のすべてにみられるわけではなく、種間差があることが示唆された。今後は、音声再生実験をおこなうことで、どのような認知基盤（音声の識別能力や語順の認識能力）が構成性の進化に必要であるのか探究していく。
３）音声構造の種間比較 新型コロナウイルス蔓延の影響で、国外におけるフィールドワークが困難な状況となってしまった。そこで、オンライン上にアップされた録音や国外の共同研究者の録音データをもとに、シジュウカラ科鳥類音声構造の多様化の道筋を明らかにしたいと考えている。本手法では、どのような状況で発せられた音声であるか詳細に評価できず、各音声の意味や機能を推測することは困難であるが、シジュウカラ科鳥類約60種の音声構造の網羅的な比較研究、深層学習を用いた音声の分類といった点で新規性が高く、遂行する意義が十分にあると考える。
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