2021 Fiscal Year Annual Research Report
Synaptic inputs and integration on the excitatory and inhibitory neurons in the visual cortex.
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20H03336
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
根東 覚 東京大学, ニューロインテリジェンス国際研究機構, 特任准教授 (20301757)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 2光子カルシウムイメージング / スパイン / 一次視覚野 / 興奮性ニューロン / シナプス入力機能マップ / 入力ー出力変換 / 非線形統合 / 神経演算 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニューロンは多数のシナプス入力を受信し、受信した信号を選択的に統合することにより、一意の出力を決めていると考えられる。しかしながら、具体的にどのようなメカニズムにより出力が決められているかは未知な点が多く残されている。単一ニューロンレベルでの情報統合メカニズムの解明は、神経回路の情報処理を理解するうえで重要なことの一つと考えられる。本研究では、マウス大脳視覚野のニューロンをモデルに入力―出力変換のメカニズムの解明を目指している。2021年度は、2020年度に引き続き大脳視覚野のニューロンのうち興奮性ニューロンに着目し、個別のニューロンからスパイン活動の大規模2光子カルシウムイメージングを行った。大脳視覚野の単一興奮性ニューロンから約1000個のスパインの活動を記録し、各スパインの位置と反応特性を樹状突起上に再現したシナプス入力機能マップの作製に成功した。このマップをもとに、シナプス入力の機能分布を解析しモデル計算を行った結果、樹状突起における非線形演算と細胞体における非線形演算の2つの演算機構の組み合わせにより行われている可能性が分かった。結果を論文としてまとめ、学術誌に投稿した。平行して、本研究費の2つ目の課題である抑制性ニューロンにおける神経演算の仕組みの解明を行うための準備実験を開始した。抑制性ニューロンから興奮性シナプス入力を記録するには、興奮性ニューロンの場合とは異なる実験系を構築する必要があり、2021年度はその実験系を確立した。大脳視覚野ニューロンの大部分は興奮性ニューロンの為、割合の少ない抑制性ニューロン特異的にカルシウムセンサータンパクと光抑制性タンパクを発現させるために、抑制性ニューロン特異的に発現する遺伝子のプロモーターを使う発現ベクターを作成し、抑制性ニューロン特異的にイメージング可能な実験系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究期間で2つのことを明らかにする計画を立て研究費の申請を行った。1つ目は興奮性ニューロンの神経演算の仕組みを明らかにすることで、2つ目は抑制性ニューロンの神経演算の仕組みを明らかにすることである。大脳視覚野では、興奮性ニューロンが約8割、抑制性ニューロンが残り約2割を占めている。神経回路はこれら興奮性及び抑制性ニューロンが複雑に神経結合することにより組み立てられている。これらのニューロン間の神経結合則については少しずつ解明が進んでいるが、各タイプのニューロンの神経演算則についてはほとんど解明が進んでいない。神経回路の情報処理を理解するためには、各素子の情報処理を理解することも重要である。本研究課題では、まず興奮性ニューロンにおける神経演算についての解明に取り組み、2021年度は実験とデータ解析をほぼ終え、学術論文として投稿しレビューの段階まで達成できた。また、平行して抑制性ニューロンについての実験を開始した。それゆえ研究は概ね当初の計画通り順調に進捗しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はまず、昨年度学術誌に投稿しレビューを受けている興奮性ニューロンについての論文のリバイス実験を行い、アクセプトを達成する。次にあるいは同時並行して、本研究費の2つ目の課題である抑制性ニューロンにおける神経演算の仕組みの解明に引き続き取り組む。2021年度に抑制性ニューロンから興奮性シナプス入力を記録するための実験系は確立している。この実験系を用いて、抑制性ニューロンからの興奮性シナプス入力の計測を開始する。興奮性ニューロンで行ったのと同様に視覚刺激を提示し、シナプス反応を大規模かつ網羅的に記録する。興奮性ニューロンでは興奮性シナプスが作られる場所は主にスパインであったが、抑制性ニューロンではスパインを持たないことが多く、シナプス入力は主に樹状突起シャフトに直接作られることを特徴とする。抑制性ニューロンから興奮性シナプス応答を記録した報告はまだほとんどなく、スパインの場合とは異なる記録・解析方法を検討する必要性が考えられる。方法論の確立後、興奮性ニューロンの場合と同様に各シナプスの位置と反応特性を樹状突起上に再現したシナプス入力機能マップを作製する。このマップをもとに、シナプス入力の機能分布を解析し、モデル計算を行い入出力変換機構の解明に取り組む。そして最後に、興奮性と抑制性ニューロンの単一ニューロン上での情報処理の差異について比較検討を行う。
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