2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the function of the sleep architecture based on the identification of novel brainstem neuronal circuits
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20H03353
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 悠 京都大学, 医学研究科, 教授 (40525812)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 睡眠 / マウス / 脳幹 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々が同定した睡眠制御細胞群に着目し、レム睡眠を人為的に操作したマウスにおいて、脳機能に生じる影響を解明して、さらに、そのメカニズムを細胞レベル・分子レベルで明らかにすることを目的としている。まず、初年度は、行動レベルでの影響を解析した。レム睡眠を長期的に抑制したマウスにおいて、記憶学習課題や情動・不安行動、さらに、運動学習能力などへの影響を検討した。さらに、影響が見られた行動課題に注目し、関連性の高い脳部位において、どのような異常が細胞レベル・分子レベルで生じているかの解明に取り組んだ。その際には、どのような細胞種や分子経路にフォーカスするかは、先入観に基づく仮説を立てずに進めるために、当該部位のtotal RNAを得て、RNA-sequencingを実施した。レム睡眠を長期的に抑制したマウスと、増加させたマウスとで、逆方向に発現量が変動した遺伝子こそが、睡眠構築の機能解明につながる重要な遺伝子であると期待される。 一方、睡眠構築が脳全体に作用するメカニズムを神経回路レベルでも解明することを目指した。そのために、私たちが同定した脳幹のレム睡眠制御を担う神経ネットワークを構成する細胞群が、それぞれどこの脳部位へと投射するかを解析した。具体的には、軸索終末に局在するSynaptophysin-GFPを発現するウイルスベクターや、順行性に伝播するタイプの血清型のウイルスベクターを用いた。さらに、同定された脳部位・神経回路の一部に関しては、その部位の細胞の機能を明らかにするために、化学遺伝学的に神経活動を操作できるウイルスベクターを導入し、活性化または不活性化による影響を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の交付申請書に記載した計画に概ね則って研究を進めることができたため、上記の通り判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、RNA-seqの結果を踏まえて、どの細胞種、分子経路がレム睡眠の作用を特に強く受けるかを明らかにする。特に、レム睡眠を長期的に抑制したマウスと、増加させたマウスとで、逆方向に発現量が変動した遺伝子こそが、睡眠構築の機能解明につながる重要な遺伝子である可能性が高いことを踏まえて、それらの遺伝子がどの細胞種に発現し、どのような細胞機能と関わるかを明らかにする。特に影響の強かった遺伝子については、その遺伝子が発現する細胞種または含まれる分子経路への影響の全体像を得ることを目指して、免疫組織化学・in situ hybridizationなどの手法を適用する。 また、我々が同定したレム睡眠制御回路の操作が睡眠以外の影響も有する可能性を踏まえ、プラワーポット法など、異なるレム睡眠阻害方法によっても、当該の細胞種または分子経路が影響を受けるかを解析することで、レム睡眠の操作そのものがもたらした効果であるかを検証する。さらに、睡眠構築を制御する細胞群の活動様式が不明であることを踏まえ、細胞種特異的な神経活動の記録を行う。そのために、それぞれの神経細胞に選択的にカルシウムイメージング用のプローブ(GCaMP6)を発現させて、脳装着型の超小型顕微鏡を用いたイメージングを実施する。これにより、睡眠構築を支配する脳幹の神経ネットワークの動作原理も解明する。
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