2022 Fiscal Year Annual Research Report
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20H03354
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中嶋 藍 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (60706331)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 情動・行動 / 社会性 / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
嗅覚は、進化的に古くから保存された化学感覚であり、採餌や天敵からの回避など個体の生存に極めて重要な役割を果たす。外界に存在する匂い分子は鼻腔の奥に存在する嗅神経により受容され、その情報は嗅球を介して嗅覚皮質へと伝達される。これまで、末梢嗅覚組織における情報処理メカニズムに関しては精力的に研究が進められてきた。一方で、嗅球や梨状皮質をはじめとするより高次の領域については、形態や発火特性が異なるサブタイプが存在することが明らかになっているものの、それぞれの遺伝的マーカーや、細胞タイプに応じた回路形成の原理は不明である。 前年度は、単一細胞の遺伝子発現プロファイルを一度に数千個調べることが可能な大規模単一細胞RNA-Seqを実施し、匂い情報処理を担う梨状皮質に存在する細胞のサブタイプを遺伝子発現の観点から分類することを試みた。単一細胞RNA-Seqの実施にあたって、単純な単一細胞への分離では十分な数の生細胞が得られなかったため、梨状皮質の細胞から核を抽出することで、合計2,294細胞における核内トランスクリプトームを同定することに成功した。遺伝子発現プロファイルから、これらの細胞は11種類の細胞種に分類された。さらに、既知の細胞種マーカーを指標に興奮性神経細胞を分類することで、梨状皮質に存在する興奮性細胞中のサブタイプ特異的マーカーの候補となる遺伝子群を同定した。 本年度は、組織学的検討を実施し、単一細胞RNA-Seqにより同定したサブタイプマーカーが層特異的に配置されていることを明らかにした。さらに、遺伝子改変マウスの解析により発生の過程において梨状皮質の細胞タイプに応じた層形成に重要な役割を果たす因子を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子発現プロファイルから、梨状皮質細胞は11種類の細胞種に分類し、サブタイプ特異的マーカー候補となる遺伝子を同定した。これらのマーカー遺伝子を用いて、細胞種特異的な神経活動の操作・記録と行動試験を行なうことにより、梨状皮質細胞のなかでも各々のサブタイプがどのような嗅覚機能を担っているのかを明らかにすることが可能となると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現プロファイルから、梨状皮質細胞は11種類の細胞種に分類し、サブタイプ特異的マーカー候補となる遺伝子を同定した。これらのマーカー遺伝子を用いて、細胞種特異的な神経回路の形成と匂い情報処理の解明が可能となると期待できる。 梨状皮質の細胞種特異的な配置に関わる因子の由来を検証するとともに、梨状皮質scRNA-seqにより得られた細胞のサブタイプが発生・発達のどのタイミングで生み出されるかを検証することを通じて嗅覚情報処理を担う脳領域について回路構築の分子メカニズムを解明することを目指す。
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Research Products
(2 results)