2020 Fiscal Year Annual Research Report
Stereoselective Synthesis of Chiral Substituted-Cyclobutanes and Ladderanes
Project/Area Number |
20H03360
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 美洋 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (90226019)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シクロブタン / ラダラン / ルテニウム / ロジウム / 環化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
シクロブタンは4つの炭素からなる小員環であり,立体配座の自由度が制限された特徴ある三次元構造を有する。また,創薬においてはオレフィンやベンゼンの生物学的等価体としての利用も期待される骨格である。更に最近,シクロブタン環が連結し「はしご状」となったラダラン(ladderane)構造が嫌気性アンモニア細菌(アナモックス菌)の膜脂質から発見され,その機能にも興味が持たれている。一方,シクロブタン化合物の合成に関しては古くから研究がなされているが,立体選択的な合成が難しく,特に多置換シクロブタンの立体選択的合成法や光学活性体での合成法は確立されていない。またラダラン化合物に関しては合成例が極めて少ない。そこで本研究課題では,光学活性多置換シクロブタン及びラダラン化合物の立体選択的合成法の確立を目指している。 研究開始初年度の2020年度は,1)Ru触媒を用いたラダラン骨格の構築法の展開,2)Rh触媒を用いた光学活性スピロシクロブタン骨格の構築,の2つに焦点を当て研究を進めた。すなわち,1)ではその後の官能基化の手掛かりとなる「硫黄官能基」を含有する基質によるRu触媒を用いた環化反応の検討を行なったところ,これまで用いてきた炭素官能基や窒素官能基を持つ基質とは性質が異なり,中性錯体を用いた反応,カチオン性錯体を用いた反応のいずれの場合も目的とするラダラン骨格を持つ生成物が得られるものの,構造未知の化合物が主生成物となった。この化合物はNMRスペクトルからシクロブタン骨格を有する対称性の良い化合物であることがわかっているが,構造の詳細を決めるには至っておらず,今後X線構造解析等によって解析する予定である。一方,2)のRh触媒を用いた光学活性スピロシクロブタン骨格の構築では,目的物を高い収率及び鏡像異性体過剰率で得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始初年度の2020年度は,1)Ru触媒を用いたラダラン骨格の構築法の展開,2)Rh触媒を用いた光学活性スピロシクロブタン骨格の構築,の2つに焦点を当て研究を進めた。その結果,1)では,当初の研究計画の通り,その後の官能基化の手掛かりとなる「硫黄官能基」を含有する基質によるRu触媒を用いた環化反応で,目的となるラダラン骨格を持つ化合物の合成に成功した。しかし,現時点ではその収率は満足のいくものではなく,また構造不明の化合物が主生成物として得られた。現在,目的化合物の収率の向上と構造未知の主生成物の構造解析を行なっているところである。また,2)のRh触媒を用いた光学活性スピロシクロブタン骨格の構築では,スピロ骨格を持つ二環式シクロブタン化合物を高い収率及び鏡像異性体過剰率で得ることに成功し,論文として報告することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,Ru触媒を用いたラダラン骨格の構築法の展開では,硫黄官能基含有ラダラン化合物の収率の向上を目指し,触媒系の最適化を進める予定である。また,構造不明の化合物に関しては,化合物の対称性の高さのため,2次元NMR等での解析は困難であることが既に明らかとなっているため,今後はX線構造解析等を行なっていく予定である。また,現時点で得られている硫黄官能基含有ラダラン化合物の分子変換を行っていくとともに,新たな基質としてホウ素官能基を含有する基質によるRu触媒を用いた環化反応を進めていく。一方,Rh触媒を用いた光学活性スピロシクロブタン骨格の構築では,現時点で得られている化合物はその後の誘導体化が困難であるため,誘導体化の足掛かりとなる硫黄官能基やホウ素官能基を持つ化合物の飯能へと展開する予定である。
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Research Products
(8 results)