2020 Fiscal Year Annual Research Report
アルケン型ペプチド結合等価体の分子特性の解明と創薬応用
Project/Area Number |
20H03363
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳴海 哲夫 静岡大学, 工学部, 准教授 (50547867)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペプチド / 生物化学等価体 / アルケン / 立体選択的合成 / アジリジン / 非共有結合性相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)アルケン型ペプチド結合等価体による非共有結合性相互作用のミミック効果:本研究では、ペプチドやタンパク質の構造形成に重要なn→π*相互作用に着目し、種々のアルケン型ペプチド結合等価体のn→π*相互作用のミミック効果を実験科学ならびに計算化学の両方向から精査した。 アセチルプロリンメチルエステルに対応する(E)-アルケン型、(E)-メチルアルケン型、(Z)-クロロアルケン型化合物を立体選択的に合成した。合成した化合物群を用いて検討を行ったところ、天然型ペプチドはtrans-アミド配座が優勢に対し、クロロアルケン型やメチルアルケン型ペプチド結合等価体はcis-アミド配座が優勢であることを明らかにした。さらに、合成したアルケン型化合物群のn→π*相互作用についてNBO解析したところ、その相互作用エネルギーは0.05 kcal/mol未満であることが明らかになり、ペプチド鎖中においてアルケン型ペプチド結合等価体はn→π*相互作用の受容体としては有用ではないことが明らかになった。
(2)特殊アミノ酸含有アルケン型ペプチド結合等価体の化学合成と二次構造制御:特定の二次構造を誘起するα,α-ジ置換アミノ酸を導入したクロロアルケン型ペプチド結合等価体の立体選択的合成を検討した。ケチミンとα,α-ジクロロ酢酸メチルを基質とするアザダルゼンツ反応によって、高度に官能基化された四置換アジリジンを合成し、これを鍵中間体とすることで目的のα,α-ジ置換アミノ酸含有クロロアルケン型ペプチド結合等価体を合成することに成功した。また、合成した等価体はペプチド鎖に導入できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響で当初より研究計画に遅れが生じたものの、アセチルプロリンメチルエステルに対応する(E)-アルケン型、(E)-メチルアルケン型、(Z)-クロロアルケン型化合物の立体選択的合成に成功し、アルケン型ペプチド結合等価体のn→π*相互作用のミミック効果の定量的評価も達成した。特殊アミノ酸含有アルケン型ペプチド結合等価体の創薬研究については、立体選択的合成法を開発することに成功した。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
-アルケン型ペプチド結合等価体による非共有結合性相互作用のミミック効果:これまでの研究成果のとりまとめを行う。 -特殊アミノ酸含有アルケン型ペプチド結合等価体の化学合成と二次構造制御:シクロペンタン骨格を有するジ置換アミノ酸(Ac5c)を含むクロロアルケン型ペプチド結合等価体を合成し、結晶性ヘリックスペプチドに応用することで、本等価体の二次構造制御能を精査する。
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