2021 Fiscal Year Annual Research Report
アルケン型ペプチド結合等価体の分子特性の解明と創薬応用
Project/Area Number |
20H03363
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳴海 哲夫 静岡大学, 工学部, 准教授 (50547867)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペプチド / 生物化学等価体 / アルケン / 立体選択的合成 / アジリジン / 非共有結合性相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
-アルケン型ペプチド結合等価体による非共有結合性相互作用のミミック効果:本研究では、タンパク質のフォールディングの起点となるターン構造に寄与するクロロアルケン型ペプチド結合等価体の立体電子効果について検討した。具体的には、βターン構造を形成しやすいL-Xaa-D-Yaa配列にクロロアルケン骨格に導入したクロロアルケン型ペプチドミメティックを合成し、βターン構造のミミック効果を精査した。複数の配列(L-アラニン-D-アラニン、L-バリン-グリシン、L-バリン-アラニン、L-フェニルアラニン-D-バリン)に対応するクロロアルケン型ペプチドミメティックの立体選択的合成に成功した。これらペプチドミメティックを用いて、分光学的解析を行い、クロロアルケン型ペプチドミメティックが溶液中においてβターン構造を形成することを明らかにした。また、結晶構造に基づく量子化学的解析から、σ(C-H)→σ*(C-Cl)相互作用およびnp(Cl)→σ*(C-H) 相互作用が、クロロアルケン型ペプチドミメティックが形成するβターン構造の安定化に寄与すること見出した。
-グアニン四重鎖構造を標的とするアルケン型ペプチドミメティックの創製:グアニン四重鎖構造に結合するペプチド性抗がん剤の創製を目的として, G4構造に特異的に結合するタンパク質TLS/FUSのアルギニン-グリシン-グリシン配列(RGG配列)を多く含むRGG3ドメインをもとに、天然型RGGペプチド10種類およびこれらに特定の二次構造制御能を有するアルケン型ペプチド結合等価体を導入したアルケン型RGGペプチドミメティック31種類を合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な配列を有するクロロアルケン型ペプチドミメティックの立体選択的合成に成功し、詳細な構造解析の結果、クロロアルケン型ペプチド結合等価体が優れたβターンミミックとして機能することを明らかにした。グアニン四重鎖構造を標的とするアルケン型ペプチドミメティックの創製では、クロロアルケン骨格が異性化するという問題が生じたものの、分離条件を検討することで所望のRGGペプチドおよびRGGペプチドミメティックの合成に成功した。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
-アルケン型ペプチド結合等価体による非共有結合性相互作用のミミック効果:ペプチド系有機分子触媒に応用したペプチドミメティック型触媒を合成し、不斉触媒反応を利用して、非共有結合性相互作用のミミック効果を定量的に評価する。また、n→π*相互作用が関与する近傍ペプチド結合のtrans/cis異性化に与える影響を明らかにする。 -グアニン四重鎖構造を標的とするアルケン型ペプチドミメティックの創製:合成したRGGペプチドおよびRGGペプチドミメティックの構造解析ならびにG4構造との結合親和性を評価する。
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