2021 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴法によるG蛋白質共役型受容体の活性制御機構の解明
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20H03375
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 卓見 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (20451859)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | NMR / 膜タンパク質 / GPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
【非競合性リガンド結合状態の mOR のシグナルの観測】 BMS-986122は、mORに非競合的に作用すること、および薬効度が最も高い薬物が結合したmORのシグナル伝達活性をさらに上昇させることが報告されている。今年度は、BMS-986122がmORのシグナル伝達活性を制御するメカニズムを解明するために、mORのメチオニン残基を観測するNMR解析を、各種リガンドとBMS-986122が存在する条件下で行った。その結果、M283等のNMRシグナルに、シグナル伝達活性と対応する変化が観測され、mORが、不活性化構造、部分活性型構造、完全活性型構造の平衡状態にあること、薬効度が最も高いリガンドが結合した状態においても部分活性型構造が存在すること、BMS-986122は、完全活性型の割合を上昇させることが明らかとなった。加えて、solvent PRE実験により、完全活性型では、M283が溶媒に露出することが明らかとなり、細胞内側がより開いた構造を取ることが示された。さらに、BMS-986122存在下では、mORのT162M変異体では、BMS-986122による活性上昇が観測されなくなったことから、BMS-986122がT162近傍のポケットに結合することが示された。以上より、BMS-986122が、T162があるTM3と、活性と関連する構造平衡が観測されたTM6の相互作用に摂動を与えることで、複数の活性型構造の中でも細胞内側がより開いた完全活性型構造を安定化することで,薬効度が最も高い薬物が結合した mORのシグナル伝達活性をさらに上昇させることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的では、非競合的に作用するリガンドが存在する条件において、各種リガンドが結合した状態のmORのNMR解析を行い、リガンド結合部位の同定および構造平衡の変化の検出を行う計画であった。これと対応するように本年は、BMS-986122が存在する条件におけるmORのNMR解析により、BMS-986122が、T162があるTM3と、活性と関連する構造平衡が観測されたTM6の相互作用に摂動を与えることで、複数の活性型構造の中でも細胞内側がより開いた完全活性型構造を安定化することで,薬効度が最も高い薬物が結合した mORのシグナル伝達活性をさらに上昇させることを明らかにした。したがって、本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
b2AR の P/I/F モチーフと NPxxY モチーフの間に位置する L124 への変異導入により、G 蛋白質活性化能を保持したままアレスチン活性化能が顕著に低下することが報告されている。そこで、アレスチンの活性化に重要なモチーフ構造を同定するために、L124 の変異体について、メチオニン残基メチル基およびチロシン残基主鎖アミド基を検出するNMR実験を行い、変異導入に伴う構造平衡の変化を調べる。また、これまでのNMR解析で明らかとなったGPCRの活性を規定する動的構造平衡を反映するとともに、GPCR発現細胞における作動薬添加に伴うcAMP濃度のリアルタイム変化の報告値を再現するような数理モデルを、交換モンテカルロ法を利用して構築することで、シグナル制御機構を定量的に明らかにする。
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