2021 Fiscal Year Annual Research Report
がん化学療法抵抗性改善機能に基づく天然由来新規医薬品シーズの開拓
Project/Area Number |
20H03397
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
松本 崇宏 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (30780431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 智絵 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (10804221)
中村 誠宏 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (20411035)
渡部 匡史 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60634326)
渡辺 徹志 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (90182930)
齊藤 洋平 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (90411032)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 熱ショックタンパク質 / がん幹細胞 / Wnt シグナル / Lindera umbellata / Petasites japonicus / Hypericum erectum / Valeriana fauriei / P-糖タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞が薬剤抵抗性を示す主な原因として,アポトーシス抑制機能を介して薬剤抵抗性に寄与する熱ショックタンパク質 (HSP) の過剰発現および薬剤抵抗性・多分化能を有するがん幹細胞 (CSC) の存在等が挙げられる. 研究代表者・分担者が保有している化合物ライブラリーおよび本研究計画により得られた天然由来低分子有機化合物について,単独およびアドリアマイシン (ADR) 併用下における細胞増殖,細胞死,および細胞の形態に与える影響の評価を行った.その結果,オトギリソウ(Hypericum erectum),カノコソウ (Valeriana fauriei),およびナンテン (Nandina domestica) より,単独では子宮頸がん (HeLa) 細胞の増殖,細胞死,および形態に影響を与えることなく,ADRの細胞死誘導作用を有意に増強することを見出した.そこで,これらの化合物について機序解明を進めたところ,オトギリソウ含有プレニル化フロログルシノール誘導体およびカノコソウ含有セスキテルペン類がHeLa細胞において,HSP105の発現を低下させ,ナンテン含有アルカロイドは,P-糖タンパク質の機能を阻害することにより,HeLa細胞のADR感受性を増強することが示唆された. また,スフィア形成法により作製したU251-MG CSCに対して,フキ (Petasites japonicus) 含有セスキテルペンおよびクロモジ (Lindera umbellata) 由来新規化合物 linderapyrone が増殖抑制活性を示した.さらにlinderapyrone は レポーターアッセイ,ウェスタンブロッティング法,リアルタイムPCR,および DNA マイクロアレイ解析の結果,Wnt シグナル阻害活性を介し,CSCの駆逐作用を示している可能性が強く示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者・分担者が保有している化合物ライブラリーおよび本研究計画を通し見出した新規化合物について,抗がん剤抵抗性改善機能評価を進めた結果,数種の化合物がADRの作用増強作用を有することを明らかとし,さらにCSCの駆逐に有用であると予想される化合物を見出している.さらに上記ADRの作用増強作用がHSP105の発現抑制作用およびP-糖タンパク質阻害作用を介したものであること,CSC の駆逐作用がWnt経路の阻害を介したものであることを明らかとしている.特に,HSP105発現阻害作用を有する天然由来低分子有機化合物に関する報告は,本研究計画によるものが初めてである.このように,新規抗がん剤抵抗性改善機能を有する化合物を見出すとともに,その機序を明らかとすることが出来ている事から,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画で見出した新規HSP105発現阻害作用およびWnt経路阻害作用を有する化合物について,有用性について評価を行うとともに,さらにその標的分子を明らかとする.具体的には,HSP105発現抑制作用を見出した化合物についてHSP105ノックダウン細胞におけるADR感受性へ与える影響を評価する.さらに,ADRに加え,様々な作用機序を有する抗がん剤の感受性へ与える影響についても評価を行うことで,その作用機序がHSP105の阻害作用によるものであることの確認および有用性の評価を進める. また,Wnt経路阻害作用を見出した化合物については,本経路の重要なメディエーターであるβ-cateninの細胞質・核内の存在量に影響を与えることなく,標的タンパク量を減少させている事を明らかとしており,次の段階として,標的分子を特定することを目標とした研究を進める.
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