2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H03398
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 太紀 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40810594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新堀 哲也 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (40436134)
吉成 浩一 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (60343399)
青木 洋子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80332500)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん原遺伝子 / RAS / MAPK / 発生異常 / プロテオスタシス |
Outline of Annual Research Achievements |
RASファミリーには、多数のサブファミリーとその変異型が数多く存在する。そのため、疾患の原因となる多種多様なRAS分子に効果を有する汎用性、特定のRAS変異体のみを標的とする分子特異性、を状況に応じて選択可能なRAS標的薬の開発が不可欠である。そこで3年計画の初年度である本年度は、LZTR1のRAS選択性検討、各種変異体に対するRAS分解作用の検討、in vivoならびにin vitro系の構築を中心に計画を実行した。具体的には以下の通りである。 LZTR1のRAS分子選択性を明らかにするためにLZTR1欠損細胞をゲノム編集により作出し、当該細胞とその親株を使用してマルチオミックス解析(トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析)を実施した。その結果、LZTR1の欠損によって顕著に発現量が増加するするRAS分子を数種類に絞り込むことに成功し、ウェスタンブロットならびにRT-qPCRによりマルチオミックス解析結果を検証した。 培養細胞を用いた実験系において、RAS変異体発現プラスミドを約20種類作成し、野生型LZTR1発現プラスミドとRAS変異体発現プラスミドのco-transfection実験を実施することでLZTR1により分解可能なRAS変異体を特定すると共に、野生型LZTR1では分解不可能なRAS変異体が存在することを明らかにした。さらに、既知のLZTR1病的バリアントより優性遺伝、劣性遺伝形式と考えられる遺伝子バリアントをそれぞれ約10種類選択し、LTR1変異体発現プラスミドを作成しRAS分解能の有無をco-transfection実験により解析した。 さらに、CRISPR/Cas9システムを使用したゲノム編集によるLZTR1遺伝子改変モデル生物の樹立を試みた。その結果、複数の生物種において病的バリアントまたはLZTR1単純欠損モデルの樹立に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた実験内容を概ね遂行でき、翌年度の解析で必要となる基礎データを十分に取得することができた。また、最も計画進捗に影響すると予想されたモデル生物の樹立を初年度中に終えることができ、マルチオミックス解析を用いることで当初の予定以上にin vitro系での基礎データ収集が円滑に遂行できた。 以上のことから、本研究は順調に実施できており、進捗状況は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度からは初年度に樹立した生物モデルを使用した実験に着手し、1)LZTR1機能の欠損または増強によりin vivoでもRAS異常蓄積が起こるのか、2)野生型LZTR1の発現増加によりRAS依存的な種々の表現系を改善可能であるか、3)分解促進型LZTR1の基本設計に向けた構造的特徴の抽出、などに取り組む。これらの評価・解析により、RAS分解促進法の確立に必要な分子基盤を構築する。
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