2021 Fiscal Year Annual Research Report
Pharmacokinetic study on transporters in the xenobiotic detoxification among the liver, small intestine and kidney
Project/Area Number |
20H03401
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楠原 洋之 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00302612)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 和哉 北里大学, 薬学部, 教授 (00345258)
水野 忠快 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (90736050)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 薬物動態 / 薬物トランスポーター / 内因性基質 / 初代培養上皮細胞 / 薬物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、オーファントランスポーターであるSLC17A1~4について、その発現臓器における薬物輸送における役割を明らかにするため、in vitro試験による基質化合物の探索およびSlc17a1~4遺伝子欠損マウス(cKO)を用いた薬物動態試験を実施している。野生型マウスとcKO腎臓のメタボローム解析の結果、有意に高い濃度を示したパントテン酸について、LC-MS/MSの分析条件を構築し、通常食での飼育下でパントテン酸の血漿、腎臓、肝臓中濃度を定量した。腎臓に関してメタボローム解析の結果の再現性を確認するとともに、さらに血漿中濃度、肝臓中濃度も高く、腎臓局所の変動以外の要因も考えられた。安定同位体標識したパントテン酸を用いて、静脈内投与のトレーサー試験を実施した。マウスでは尿排泄以外の経路が主排泄経路であることが示唆された。尿中排泄量には野生型マウスとcKOマウスでは差が認められないことから、腎排泄以外の経路の関与が推察される。また、利尿薬をプローブとした際にも、やはりマウスでは腎排泄以外の経路が主排泄経路と考えられた。 トランスポーター解析方法として、細胞膜上の発現量を増やす方法論として恒常的活性型カルシニューリンとの共発現について検討した。既知トランスポーターとしてOATP1B1をモデルトランスポーターとして検討した結果、発現量の増大に伴って輸送活性の増加が認められ、輸送能力が改善することを確認した。 ヒト初代培養小腸上皮細胞において利尿薬(フロセミド)の薬物透過を評価した結果、分泌方向が優位となる方向性輸送が認めら、BCRP阻害剤、ロスバスタチンと薬物相互作用が報告されているHIF1-PH阻害剤を添加時に分泌輸送の低下が認められ、トランスポーター介在性輸送を検出することに成功した。初代培養小腸上皮細胞が薬物輸送評価系として良好なin vitroモデルとなることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
cKO由来の試料の解析により、Slc17a1~4の新規基質としてパントテン酸を新規基質候補化合物として見出しており、野生型マウスとcKOとの比較により、オーファントランスポーターの基質候補化合物を同定可能であることを実証した。安定同位体標識体を用いた薬物動態試験により、血漿中濃度の変動要因を探索することに着手し、クリアランス経路に関する知見を得るなど、変動を生じる組織の同定に向けて進捗している。 新規トランスポーターの機能解析方法として、恒常的活性型カルシニューリンおよび不活性化型の共発現系の比較により、発現量の増大と輸送活性の増大を見出している。共発現の影響を受けるトランスポーターでは、基質探索に有用であり、機能未知のトランスポーター機能をin vitroで明らかにするための研究ツールとして有用であることを見出している。 細胞内動態に関する知見を得るため、細胞内オルガネラ解析のためにミトコンドリアに発現する代謝酵素についても、恒常的な発現細胞を構築し、薬物の細胞毒性に対する感受性評価等を行う準備を整えた。毒性評価を行うための指標作りも進んでいる。 従来、単離上皮細胞は調製後、凝集するため多孔性フィルター上の培養は困難であり、薬物輸送の評価には適していなかった。今回、新たに確立した方法を用いることで、腸管上皮細胞の経細胞輸送を評価できるin vitroモデルとなることを確認し、腸管における薬物輸送機構を解明する上で有用である。新たに利尿剤フロセミドもトランスポーターによる方向性を輸送の関与を解明したことに加えて、トランスポーター介在性の薬物相互作用の再現など、新たな発見にも繋がっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Slc17a1~4の生理的役割を明らかにするため、cKOを用いた薬物動態試験は重要であり、静注時の再現性に加えて、経口投与など、吸収過程・肝初回通過高価などについても検討を進める予定である。消化管モデルに関しては、薬物輸送評価系として有用であることを確認し、細胞調製方法はヒト以外の動物種にも適用可能であることが確認している。ヒトモデルに加えて、cKOマウスなどから初代培養腸管上皮細胞を作出し、in vitroでの薬物透過試験を実施することで、消化管上皮細胞におけるSlc17a1~4などのトランスポーターの役割を解明するとともに、トランスポーター介在性の薬物相互作用評価など医薬品開発に向けて、in vitroモデルの有用性を高めるための試験を実施する。また、cKOの影響で生じる発現変動を確認する必要があり、野生型・cKOマウス組織のRNAseq解析にも取り組む。計測データは取得済であり、統計解析を行うことで、発現変動する遺伝子に関する知見を得、さらにそれを手がかりとして、Slc17a1~4の生理学的重要性を解明するための解析を進める予定である。細胞内動態評価の実施項目として、ミトコンドリアに発現する代謝酵素の恒常的発現細胞を構築済であり、mRNAおよびタンパク質レベルで確認し、準備を整えた。本細胞を利用した薬物感受性試験により、薬物動態における役割を解明することにも取り組む。また、同様にミトコンドリアに発現する他の代謝酵素に関しても検討を加える。
|