2021 Fiscal Year Annual Research Report
抗原の動態制御に基づく有効かつ安全な新規経鼻ワクチン創製基盤の構築
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20H03404
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉岡 靖雄 大阪大学, 微生物病研究所, 特任教授(常勤) (00392308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吾郷 由希夫 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50403027)
佐藤 慎太郎 大阪大学, 微生物病研究所, 特任准教授(常勤) (80447333)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ワクチン / 感染症 / アジュバント |
Outline of Annual Research Achievements |
経鼻ワクチンは、多くの病原体の初発感染部位である上気道・下気道粘膜面でも抗体産生を誘導するなど、感染そのものを防御し得る次世代型ワクチンとして期待されている。しかし、「ワクチン抗原を如何に効率よく鼻腔リンパ組織へ送達し、如何に安全かつ効果的に免疫応答を惹起するか」という単純な課題を未だ克服できておらず、抗原の動態制御が、経鼻ワクチン開発における医療薬学領域での最重要課題となっている。そこで本研究では、「抗原動態制御による画期的経鼻ワクチンの開発」を最終目標に、Fc受容体を介した抗原送達に着眼した、新たなアジュバントフリー経鼻ワクチンの開発を推進している。2021年度は、生体内に存在する抗体を抗原送達キャリアとして活用した新たなワクチンプラットフォームの構築を図った。近年、鼻腔のIgAは病原体排除のみならず、病原体を鼻腔リンパ組織へと送達し、抗原特異的な免疫応答を効率的に誘導することが報告されている。そこで、ほぼ全ての成人はインフルエンザウイルス(flu)に罹患歴があり、flu由来ヘマグルチニン(HA)に対する抗体を鼻腔内に保有していることに着眼し、ワクチン抗原蛋白質とHAの融合蛋白質を、fluに罹患経験のあるマウスに経鼻ワクチンすることで、HAに対する鼻腔内IgAが抗原送達キャリアとなり、抗原蛋白質を鼻腔リンパ組織に効率的に送達することで、アジュバントを使用せずとも粘膜免疫を効率良く誘導可能であることを先駆けて明らかとした。特に、新型コロナウイルス由来抗原を用い、血中IgGのみならず、鼻腔中IgAも強く誘導し、感染および重症化をも予防し得ることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、当初の予定通り研究を実施した。特に、生体内抗体を活用した経鼻ワクチンについて、コンセプトを実証すると共に、予想以上に強力にワクチン効果を誘導し得ることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度に得られた知見を基盤として、本システムの汎用性を評価すると共に、免疫誘導機序の詳細を評価する。 1)2021年度までは、新型コロナウイルス由来抗原をワクチン抗原に用い、HAとの融合蛋白質をflu罹患マウスに経鼻ワクチンしていた。そこで本システムの汎用性を評価する目的で、RSウイルス由来抗原および肺炎球菌由来抗原をワクチン抗原に用い、HAとの融合蛋白質をflu罹患マウスに経鼻ワクチンし、RSウイルスおよび肺炎球菌に対する免疫誘導および感染防御効果を検証する。さらに、新型コロナウイルス由来抗原をワクチン抗原に用い、肺炎球菌由来抗原との融合蛋白質を、肺炎球菌罹患マウスに経鼻ワクチンする。 2)安全性評価:経鼻投与後、体重変化、血球数、血液生化学マーカー、鼻腔・血液中サイトカイン量を指標として安全性を評価する。また、HE染色、タネル染色により病理学的に炎症像などを評価する。 3)免疫誘導機序の解明:抗原蛋白質の体内動態解明は、免疫誘導機序の解明のみならず、副反応予測にも直結する。そこで、蛍光蛋白質とHAの融合蛋白質を経鼻ワクチン後、鼻腔組織における抗原動態を顕微鏡およびフローサイトメトリにより評価する。さらに、マウス鼻腔リンパ組織中の樹状細胞への取り込みについて、Eaペプチドを用いた評価系などにより精査する。 4)注射型ワクチンへの応用:本システムについて、経鼻ワクチンのみならず、注射型ワクチンへも適用可能か検証する。特に、アジュバントを用いずに強力に免疫応答を誘導し得るかを精査する。
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Research Products
(9 results)