2021 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ概日リズム中枢はGABA作動性神経細胞から構成されるのか?
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20H03425
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
榎木 亮介 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 准教授 (00528341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江川 潔 北海道大学, 医学研究院, 助教 (40450829)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 概日リズム / GABA / クロライド / 光イメージング / カルシウム / 視交叉上核 / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、哺乳類の概日リズム中枢である視床下部の視交叉上核がGABA作動性神経細胞で構成される生理的意義を、光イメージング技術を駆使して解明することを目指している。GABAは幼弱期の神経細胞では興奮性に働き、生後発達とともに抑制性へとスイッチングされることが知られているが、視交叉上核は24時間でGABAの応答性は興奮性-抑制性が変動することが報告されている。GABAの応答性を決定する主たる要因は塩素(クロライド)イオンであり、視交叉上核ではクロライド濃度が日内変動することが報告されているが、これまでの研究はパッチクランプ計測による短時間の1細胞計測を元にしており、視交叉上核の2万個の細胞ネットワークがどのようにクロライド濃度を長期間スケールで変化させるかは分かっていない。私はこれまでに、 遺伝子コード型クロライドプローブの発現のためのアデノ随伴ウイルスを作成し、視交叉上核の神経細胞における発現とその機能確認を行っており、プローブの蛍光輝度が細胞内クロライド濃度を正確に反映すること、またこれまでのパッチクランプ計測による報告されている濃度とほぼ一致することなどを確認しており、本研究の実現性を担保する一連のデータを得ている。さらに長期蛍光イメージング顕微鏡システムにより数日間の連続的なタイムラプス計測を行い、クロライドイオン濃度の24時間のリズムを細胞ネットワークレベルで観察し、ネットワークにおける特徴的な部位差とリズム位相パターンを見いだしている。またクロライドイオンとカルシウムイオンの同時イメージング計測により、"概日クロライドリズム"の位相を決定した。さらに、細胞内クロライド濃度を規定する輸送体や調節因子の阻害剤を添加し、概日クロライドリズムのリズムパラメーターや空間パターンを詳細に解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに細胞内クロライド濃度の変動を光イメージングにより計測する実験法を確立し、"概日クロライドリズム"を細胞ネットワークレベルで計測することに成功している。 クロライドイオンはGABAによる神経細胞の応答性を決定する主因子であることから、概日時計中枢神経回路のリズム発振メカニズムの解明に繋がる重要な結果であると考える。さらに、クロライド濃度を規定する分子群の阻害剤の投与により概日クロライドリズムを生成する分子実体も見えており、本研究は順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
クロライドイオン濃度を制御する主因子であるイオン輸送体(NKCC1, KCC2)の阻害薬の効果を詳細に解析する。さらにこれらの交換輸送体を制御する上流因子であるWNK、SPAK/ORS1等の阻害剤を投与し、概日クロライドリズムの振幅/周期/最低値などのパラメーターや、視交叉上核内の空間パターンを詳細に解析する。
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