2020 Fiscal Year Annual Research Report
早期誘導遺伝子の継時的なヒストンコード変化を可能にする因子の探索及びその機能解析
Project/Area Number |
20H03432
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神吉 康晴 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (00534869)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 血管新生 / エピゲノム / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを含む高等真核生物の核内転写機構は非常に複雑であり、転写の開始、終結に関してもまだ不明な点が多い。我々はこれまでにヒト血管内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells; HUVECs)を用いて、Vascular Endothelial Cell Growth Factor (VEGF)刺激が加わった際に一過性に転写される遺伝子に着目し、その転写解析を行なってきた(2014 Suehiro JI et alなど)。HUVECsにVEGF刺激を行うと、血管新生に重要な転写因子EGR3, EGR2, NR4A2などが刺激後数分で転写され、1時間後には転写が集結していることを見出している。本研究では、これら即時誘導遺伝子の転写におけるクロマチン状態を詳細に解析した。 まず、刺激前のHUVECsのEGR3遺伝子座では、染色体はcloseな状態であり、抑制系ヒストン修飾であるH3K27me3、H2AK119Ubが入っていることが明らかとなり、この時にRNA polymerase IIは遺伝子座には存在していなかった。刺激を加えると、3分程度でPol IIがリクルートされ、更にリン酸化されること、H2AK119Ub修飾が減少すること、活性化修飾であるH3K4me3修飾が入ることを見出した。哺乳類においてH3K4me3修飾を担うのはSET1A/1B複合体、MLL1/2複合体、MLL3/4複合体などである。このうち、どれが血管新生に重要かを明らかにするために、それぞれの因子のsiRNAを用いて網羅的にスクリーニングした。この結果、特にMLL3/4複合体が重要であることを見出し、この複合体の中でもPTIPがkeyであることも同定した。PTIPのin vitro, in vivoでの働きを調べたところ、血管新生に重要な新たなエピゲノム因子とであることが分かった。 これらの発見は、これまでにない血管新生阻害薬の開発の基礎となる重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、即時誘導転写因子の誘導に関わる転写因子、転写複合体、などを網羅的にプロテオミクスで同定する予定ではあったが、COVID-19蔓延によるロックダウン等の影響もあり、実験は予定通りには進まなかった。しかし、上記で記載したように、転写活性化の重要なヒストン修飾であるH3K4me3に、少なくともMLL3/4複合体、PTIPが関与していること、これらは血管新生にも重要であること、を見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
即時誘導転写因子が誘導されるためには、活性化だけではなく、抑制のブレーキが外れることも重要である。現時点では、抑制系としてH3K27me3, H2AK119Ubの関与が示唆されている。これらのどちらが、血管新生により重要であるかを明らかにする。ここで発見した因子に関して、in vitroでの血管新生を評価する。更に、将来的な創薬を考えた際には、in vivoでもこの因子が血管新生に働くことが重要であるため、血管内皮細胞特異的ノックアウトマウスの作成も視野に入れている。 これらのデータを統合し、血管新生に重要な即時誘導転写因子に関与するエピゲノム因子を明らかにし、論文投稿予定である。
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