2020 Fiscal Year Annual Research Report
Single cell analysis of tumor-microenvironment based on TIL functions
Project/Area Number |
20H03460
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
廣橋 良彦 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30516901)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腫瘍浸潤リンパ球 / T細胞受容体 / 単細胞解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究期間において、悪性黒色腫、肉腫および子宮体癌において、単細胞解析を行った。行った研究内容は下記である。 日本人に多いタイプの悪性黒色腫であるacral melanomaに浸潤する腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) を用いて、10xGenomics にて単細胞解析を行った。その結果、T細胞受容体 (TCR) 遺伝子解析から、TIL には極めてクローナリティが高い事が判明した。驚くべきことに、たった5クローンがTIL全体の50% 以上を占めている事が判明した。さらに、細胞表面マーカーから解析すると、CD8 陽性 TIL においてこのような高いクローナリティを示す事が判明した。肉腫症例においては、TILの3 クローンがTIL の約 50% を占めていた。これらの結果は、悪性黒色腫や肉腫の症例においてみられる TIL の高いクローナリティを示す。一方で、子宮体癌においては、クローナリティはそれほど高くなかった。これらの結果から、腫瘍の種類により、腫瘍微小環境を作るTILのクローナリティが高い症例と低い症例に分類できることが示唆される。また、高いクローナリティを示す CD8 陽性T細胞が、臨床的に大きな意味を成すことが示唆される。今後、特にクローナリティが高い症例において、クローナルなTIL が認識する抗原を明らかにし、機能解析も進める予定である。これらのTIL機能解析を、単細胞遺伝子発現解析と合わせて解釈する事により、腫瘍微小環境のこれまで観察できなかった側面を観察したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究期間において、複数の症例において、単細胞解析を行う事が出来た。いずれの検体もTIL に焦点を当てた解析を行っているが、想定以上にTILのクローナリティが高い事が判明した。この結果は、腫瘍に浸潤する膨大な数のTIL でも、ほんのわずかなクローンが腫瘍微小環境を作る上で大きなウェイトを占めている事が示唆される。今後腫瘍微小環境を作る細胞の単細胞遺伝子発現解析を蓄積する上で、TILの機能を下記機能解析を合わせて理解する事により、腫瘍微小環境解析が大幅に進む事が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、ヒト臨床検体において、TIL が極めて高いクローナリティを示す事が判明した。今後、下記の手法にてTIL が認識する抗原解析を行う。 TIL が認識する抗原として、遺伝子変異にコードされるネオアンチゲンまたは、正常遺伝子にコードされる過剰発現抗原、が想定される。下記の段階を経て抗原特異性を検討する。 ①TCR 遺伝子配列を元に、機能的T細胞を再構築する。本解析では、全て遺伝子レベルでの解析を行っているので、例えクローナルなTCRでもどのような機能を有するか不明であり、TCRを元に機能的T細胞を再構築する必要がある。具体的に、TCR遺伝子をJurkat T細胞や、ヒトPBMC に導入し、機能するか検討する。 ②ネオアンチゲンのスクリーニング。 腫瘍組織から、全ゲノムシークエンスを行い、遺伝子変異解析を行う。腫瘍特異的な遺伝子変異は全て、TILが認識する抗原の候補となる。すなわち、これらの遺伝子変異は全て抗原となりうる可能性がある。すべての遺伝子変異情報をコード出来るタンデムミニジーンを作成し、上記T細胞を用いてスクリーニングを行う。 ③過剰発現抗原のスクリーニング。腫瘍組織からの RNA-sequence 結果を参考に、過剰発現抗原の候補となる遺伝子を用いて、T細胞の反応性をスクリーニングする。
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