2020 Fiscal Year Annual Research Report
Role for two distinct lineages of beta cells in diabetes progression
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20H03463
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
藤谷 与士夫 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (30433783)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵β細胞 / PP細胞 / 膵ラ氏島 / シングルセルRNA解析 / グルコース応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ppy遺伝子によってコードされるpancreatic polypeptide(PP)を分泌するPP細胞は、膵ラ氏島を構成する少数の細胞であるが、その特徴については不明点が多い。 我々はPpy-CreノックインマウスとPP特異的モノクローナル抗体を独自に開発することにより、Ppy発現細胞とβ細胞との関係を調査した。まず細胞系譜追跡実験により、Ppy発現細胞は、β細胞を含む4つの主要な内分泌細胞に寄与することが明らかとなった。 一方、野生型マウス膵島細胞の単一細胞RNA解析により、PP細胞の遺伝子プロファイルが明らかとなり、Ppy, Pyy, TSPAN8, Folr1等がPP細胞のID geneとして同定された。 また、単一細胞RNA解析によりβ細胞は7つのクラスターで構成されることが明らかなったが、β細胞は2つの系統、すなわち、Ppyを発現した経歴のあるβ細胞(Ppy系列β細胞)および、発現したことのない非Ppy系列のβ細胞に二分されることが示された。Ppy系列β細胞は、その膵島における位置、機能性および遺伝子発現プロファイルに関して明確な特徴を示した。 すなわち、Ppy系列のβ細胞は、膵島の周辺部に位置し、グルコース応答性のCa2+反応が低く、その遺伝子発現プロファイルは、PP細胞のそれに近いこと、INSのみならず、Ppy, Gcg, Somを発現するmultihormonalでGLUT2やUnc3などのβ細胞としての成熟マーカーの発現が低いことが明らかとなった。 さらにSTZ障害性の糖尿病やジフテリア毒素誘導性の糖尿病モデルにおいて、時間経過とともに、Ppy系列のβ細胞がdominantになることから、糖尿病状態におけるβ細胞障害に抵抗性を示すことが示唆された。膵島のinjury発生時には、グルコース応答性のインスリン分泌をある程度犠牲にして、β細胞を生き残らせるための仕組みが備わっているのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以上の研究実績の概要に示した内容を論文にまとめ、欧州糖尿病学会雑誌に投稿したところ、概ね良好なコメントを得ており、2021年5月17日現在revisionとなっている。本申請で掲げていた2021年に論文を発表するという第一目標は達成できそうである。PP細胞というoriginalな観点から解析を進めることにより、これまでに知られていなかったβ細胞のheterogeneityを示すことが出来た。実験計画当初に考えた、PP細胞がβ細胞の前駆細胞として機能するのではないかとの予想とは異なり、PP細胞のプロファイルに近い、PP細胞的な特殊なβ細胞集団が生理条件下に居ることが初めて示された。いくつかの糖尿病モデルマウスにおいて、この特殊なβ細胞集団の割合が増加することを観察しており、今後この現象の病態生理学的意味を明らかにするという、将来につながるテーマを得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、β細胞の中にPpy系列のβ細胞という、機能的には未熟と考えられる特殊なβ細胞亜集団が生理的条件から存在することが明らかとなった。しかしながら、その病態生理学的意味を明確にすることは現在のところ、達成できていない。STZ障害性の糖尿病やジフテリア毒素誘導性の糖尿病モデルにおいて、時間経過とともに、Ppy系列のβ細胞がdominantになることを観察している。他の糖尿病モデルや、ヒトの糖尿病について、まず、Ppy系列β細胞が割合として増えることがあるのかどうか、という点から調査していきたい。そのためには、Ppy系列のβ細胞の免疫組織染色が可能な特異的markerを見つける必要がある。また、Ppy遺伝子座にジフテリア毒素(DTA)をノックインしたマウス(Ppy-DTA)を作出し、この成獣マウスにおいてはPpy系列細胞が著減することを観察している。このマウスに様々な糖尿病を誘導することにより、Ppy系列β細胞の病態生理学的役割を明らかにしてゆきたい。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Leukotriene A 4 hydrolase deficiency protects mice from diet-induced obesity by increasing energy expenditure through neuroendocrine axis2020
Author(s)
Uzawa H, Kohno D, Koga T, Sasaki T, Fukunaka A, Okuno T, Jo-Watanabe A, Kazuno S , Miyatsuka T, Kitamura T, Fujitani Y, Watada H, Saeki K, Yokomizo T
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Journal Title
FASEB J .
Volume: 34
Pages: 13949-13958
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Single-Cell Transcriptome Analysis Dissects the Replicating Process of Pancreatic Beta Cells in Partial Pancreatectomy Model2020
Author(s)
Tatsuoka H, Sakamoto S, Yabe D, Kabai R, Kato U, Okumura T, Botagarova A, Tokumoto S, Usui R, Ogura M, Nagashima K, Mukai E, Fujitani Y, Watanabe A, Inagaki N
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Journal Title
iScience
Volume: 23
Pages: X-X
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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