2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the onset mechanism of Type 2 Autoimmune Hepatitis and related liver diseases
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20H03466
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 伸一郎 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (90361625)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / Rab7a / エンドソーム / Toll-like receptor / 2型自己免疫性肝炎 / 原発性胆汁性胆管炎 / ライソソーム / 抗原提示 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎の発症機構は明らかになっていない。我々は樹状細胞特異的に低分子量G蛋白質Rab7aを欠損させると1型と2型の自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎を発症してマウスは死亡することを発見した。令和3年度では樹状細胞の細胞内のオルガネラを電子顕微鏡と超解像顕微鏡にて解析したところ、Rab7a欠損樹状細胞はエンドソームが巨大化して、MHCクラスIとMHCクラスIIが細胞内にて蓄積していることを明らかにした。Rab7a欠損樹状細胞のエンドソーム異常によりクロスプレゼンテーションも著しく増強していた。エンドソーム異常によるToll-like receptor(TLR)の反応の増強も観察されたため、いくつかのTLR欠損マウスと交配して発症を検討したところ、TLR3欠損マウスとの交配において部分的な回復が認められた。樹状細胞特異的Rab7a欠損マウスにおいては肝臓の疾患以外に自己免疫性貧血も認められ、今後TLRや他の自然免疫受容体の欠損マウスと交配してさらなる解析をする予定である。樹状細胞特異的Rab7a欠損マウスの肝臓においてCD8T細胞が強く活性化しており、抗CD8抗体でCD8T細胞を取り除くことで肝臓の線維化に伴って認められる血小板減少症は認められなくなった。T細胞はαβT細胞とγδT細胞に分けられる。そのため樹状細胞特異的Rab7a欠損マウスにαβT細胞欠損マウスであるTCRβ欠損マウスを交配させたところ、自己免疫性肝炎の症状は消失した。一方、原発性胆汁性胆管炎の症状は残った。次にαβT細胞とγδT細胞を同時に欠損するTCRβxδ欠損マウスと交配したところ自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎の発症は消失していることを観察しているところである。γδT細胞は腸管にも存在しておりRab7a欠損マウスの小腸においてγδT細胞は増加傾向にあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの進捗状況は少し遅れていると考えている。その理由は、次々と予想外の発見があったためである。そのため方向性を少しずつ修正して行く展開となったからである。樹状細胞特異的Rab7a欠損マウスは自己免疫性肝炎を発症しており、抗LKM-1抗体陽性であったので2型の自己免疫性肝炎の発症を注目していたが、抗平滑筋抗体も陽性であったため、1型の自己免疫性肝炎も併発していることが明らかとなった。従来の組織を用いた平滑筋抗体の検出方法では難しくELISAを用いて初めて検出することができた。さらに加えて抗ミトコンドリア抗体陽性でIgM抗体濃度も高く、血中の胆道系酵素の濃度も高いことから原発性胆汁性胆管炎を発症していることが明らかとなった。肺炎や膵炎に関しては若干にしか発症せず、意外にも殆ど全てのマウスにおいてヘモグロビンの血中濃度が減少していることから自己免疫性貧血も発症していることを発見した。Rab7aを欠損した樹状細胞において何が起こっているのか観察するため電子顕微鏡観察したところ、オートファージーが強く起こっているか中途半端な状態で留まっているのか予想していたがエンドソームの巨大化が観察された。MHCの輸送と分解に異常が生じていたのである。病気の発症に関してはT細胞の中でαβT細胞は自己免疫性肝炎にαβT細胞とγδT細胞が原発性胆汁性胆管炎の発症に関わっていた。その中でγδT細胞が原発性胆汁性胆管炎の発症に関与することを突き止めるまでに時間をかけてしまった。また、動物実験施設の餌や部屋の移動に伴い病気の重症化にかかる時間が大きく変わり重症化が遅くなる傾向がでてしまった。今後その理由を明らかにする。また、実験計画通りにRab7a欠損樹状細胞におけるToll-like receptor(TLR)の関与を検討した。そしてこのTLRと病気の発症の解析も予想外の展開があり少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
樹状細胞特異的にRab7aを欠損させると1型と2型の自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎、そして自己免疫性貧血を発症してマウスは死亡する。我々は樹状細胞におけるエンドソーム異常が疾患の原因であることを強調することを試みている。しかしRab7aは様々な機能に関与しているため、Rab7aのエンドソームにおける機能と結びつく分子を樹状細胞特異的に欠損させて同じ疾患が発症するのかを検討することで樹状細胞のエンドソーム異常と疾患との関係を結び付けたい。そのため我々はRab7aの上流と下流でエンドソームの働きに関与する分子を樹状細胞特異的に欠損させたマウスの作製を検討している。Vps41はRab7aの下流でエンドソームとライソソームの融合に関与する分子である。我々は既に樹状細胞特異的にVps41を欠損させて肝炎や胆管炎を検出している。今後さらなる解析を行う。このような研究を進めることでエンドソーム異常が自己免疫性の肝臓疾患の発症に関与することを明らかにする。そしてこれら自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎と自己免疫性貧血がどの細胞によってどのように発症につながるのかをFACSによる多重染色解析を行い、さらに肝臓において様々な細胞をsortingしてRNAシーケンスを行い検討することで解明して行く。加えて原発性胆汁性胆管炎の発症に関与するγδT細胞はどの種類の受容体の細胞がモノクローナルに増えているのかどうかも検討する。本研究では発症におけるToll-like receptor(TLR)の解析を行ってきたが、今後さらなる解析を行うことで、病気の発症にどの自然免疫受容体がどのように関与するのかを検討する。γδT細胞は腸管由来のものも考えられるため、小腸や大腸を解析したところ小腸においてγδT細胞が増強していたため、原発性胆汁性胆管炎の発症における腸内細菌の影響なども検討する。
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Research Products
(5 results)