2020 Fiscal Year Annual Research Report
Sensing mechanism of PAMPs/DAMPs by innate immune receptors and their contribution to inflammatory diseases
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20H03468
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河合 太郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (50456935)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 炎症 / DAMPs |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、CRISPR/Cas9システムによるノックアウトスクリーニングを用いて、自然免疫応答制御に関わる新規因子の同定を試みた。マウスマクロファージRAW264.7細胞でスクリーニングを行った結果、ZAIPと名付けた遺伝子に変異を加えた細胞において、細菌由来のリポ多糖(LPS)刺激後の炎症性サイトカインIL-6の産生量がコントロール細胞と比較して100倍程度と顕著に増加していた。さらにRNA-seqを用いた網羅的解析を行った結果、Il6を含む多くの炎症性サイトカインやケモカインの発現上昇が観察された。ZAIPは核内に局在するタンパク質であり、興味深いことにENZ-1はヒストン修飾分子複合体の構成要素と相互作用することを見出し、エピジェネティクな制御に関与することが示唆された。また、ZAIPのコンディショナルKOマウスの樹立も行っている。平行して実施している死細胞由来の内在性因子(DAMPs)による自然免疫応答に関する解析において、今回新たに放線菌由来のNigericin刺激に伴い細胞死が誘導されDAMPsの一つIL-33が放出され免疫応答惹起に関与する可能性を見出した。Nigericin刺激により誘導されるCa2+流入がIL-33の核内から細胞質への局在変化を引き起こた。さらに、Nigericin刺激によるCaspase-1依存的な細胞死(パイロトーシス)がIL-33の細胞質から細胞外への放出に必要であった。これらのことから、IL-33の放出にはパイロトーシスに加えCa2+依存的な経路が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZAIPの機能解析については、RNA-seqによる網羅的解析から標的とされる遺伝子群を明らかにすることができた。それらの中には炎症性サイトカインやケモカインが多く含まれていた。一方、LPS刺激後の転写因子NFkBやMAPキナーゼ群の活性化にはZAIP KO細胞とコントロール細胞間で差はなく、シグナル伝達制御に直接ZAIPが関わっていないことが示唆された。興味深いことにZAIPは核内に局在しており、結合分子の探索からヒストン修飾分子複合体の構成要素と相互作用することが認められた。このことは、ZAIPがエピジェネティックな制御に関与していることを強く示唆している。また、ZAIPの機能をより広範に理解するためZAIPを欠損するガン細胞株も複数樹立をすることができた。一方、Nigericin刺激によりDAMPsの一つIL-33がCa2+依存的に放出することを見出した。これは、細胞死に伴い受動的にDAMPsが漏出するとされてきた従来の考え方と異なり、シグナル伝達経路の活性化により能動的にDAMPs放出が制御されていることを示唆するものである。また、ガン細胞由来のIL-33は免疫逃避に寄与することも示唆されていることから、現在IL-33を欠損するガン細胞株を複数樹立している段階である。同時に、Nigericin以外にも様々な抗がん剤や化合物を用いてガン細胞を刺激し、IL-33放出を促すものをスクリーニングしている。これらにより腫瘍免疫応答におけるIL-33の役割ならびに放出機構の詳細を明らかにすることができると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqの結果においてZAIP KO細胞で発現上昇が確認された遺伝子群の上流領域のH3K4me1/H3K4me3比を評価するとともに、H3K4me1の蓄積量を実際にChIP-qPCRを用いた定量を行う。また、ChIP-seq解析を通して、ZAIP KO細胞でLPS刺激後に発現上昇する遺伝子群とH3K4me1領域を比較することで、ENZ-1とヒストン修飾の関係性を明らかにする。また、アクティブエンハンサーのマーカーとしてよく用いられるH3K27acについても同様の実験系で確認を行うことで、ZAIPがエンハンサーの活性制御に関与しているかを評価する。また、ZAIPの機能ドメインを明らかにするため、部位欠損体を作成し、ZAIP KO細胞に発現させることで機能回復をするか検討を行う。生理的機能を明らかにするため、コンディショナルKOマウスの樹立と解析を進めていく。他方、ガン細胞に発現するIL-33は免疫逃避に寄与することが示唆されていることから、この機構を明らかにすることで抗腫瘍免疫応答の理解と応用に繋がることが期待される。今後、IL-33を高発現するガン細胞の探索や、IL-33放出を促す抗がん剤や化合物等を見つける必要がある。また、IL-33を欠損する細胞株の樹立を行っており、IL-33が抗主要免疫応答に果たす役割についても明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)