2020 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫疾患・アレルギー疾患の病態を制御するTIM分子の機能解明
Project/Area Number |
20H03472
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
秋葉 久弥 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60338316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 紀宏 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10465065)
安倍 能之 順天堂大学, 医学部, 助教 (10647027)
多田 昇弘 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 先任准教授 (50338315)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 免疫学 / 炎症 / 喘息 / アレルギー疾患 / 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
私達はこれまでの研究を通じて、細胞膜外で切断される遊離型TIM-4(sTIM-4)の存在を発見し、炎症細胞に発現するLMIR5と結合して、関節炎モデルマウスや喘息モデルマウスの病態形成に深く関わることを明らかにしてきた。そこで本研究は、疾患によってTIM-4を発現する細胞の種類によって炎症の慢性化に特徴的な違いがあるか検討するため、マウスsTIM-4の切断部位を同定し、これを変異させた非遊離型TIM-4マウスを作製して、各種疾患モデルにおける特徴的な機能の違いを検証することを目的とした。また炎症の定量化を目指し、ヒトsTIM-4を高感度に測定する方法を確立し、喘息患者さんなどの血清からヒトsTIM-4を測定して、発症や病態との相関を検討して臨床応用に向けた基盤を構築することも目的とした。 これまで組換えヒトTIM-4をラットに免疫して、新たにヒトTIM-4に対して結合力が強いラット抗ヒトTIM-4モノクローナル抗体を2種類得た。これらの抗体を使ってヒトsTIM-4を高感度に測定することが可能となったサンドイッチELISA法を構築した。病院倫理委員会の承認のもと、順天堂医院を受診した喘息患者さん124例の血清中のsTIM-4を測定して病態との相関を検討した結果、sTIM-4量は気流制限マーカーと有意に負の相関があり、血清sTIM-4が喘息患者さんの喘息重症度に関連することを示した。またヒトTIM-4を発現する白血病細胞株K562から液体クロマトグラフィー質量分析計を用いて、sTIM-4の切断部位の同定を試みたが、タンパク質の回収量が少なかったことから十分な計測ができなかった。したがって現在回収量を増やすために新たな方法を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、抗ヒトTIM-4モノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISAにより、sTIM-4を高感度に検出する方法の確立を目指し、系を確立した後に、喘息患者さんや関節リウマチ患者さん、全身性エリテマトーデス患者さんの血清を採取してsTIM-4の検出を試み、発症と病態の進行状態にsTIM-4値がどう相関するか検討することを目的とした。実際、2種類の異なる抗ヒトTIM-4モノクローナル抗体をラットから作製し、sTIM-4を高感度に測定する高感度サンドイッチELISAを構築し、喘息患者さん124例の血清中のsTIM-4を測定して、血清sTIM-4が喘息患者さんの喘息重症度に相関していることを示すことが出来た。 またヒトsTIM-4の切断部位を同定するとともに、マウスsTIM-4の切断部位も同定し、これを変異させた非遊離型TIM-4マウスを作製して、各種疾患モデルにおける特徴的な機能の違いを明らかにすることも目的とした。まずヒトTIM-4の細胞内領域にアミノ酸のヒスチジンが6つ並ぶタグをつけたタンパク質を発現する白血病細胞株K562を作製し、抗ヒスチジン抗体を用いて切断後に細胞に結合した状態のTIM-4を回収、液体クロマトグラフィー質量分析計を用いてsTIM-4の切断部位の同定を試みたが、タンパク質の回収量が少なく十分な計測ができなかった。しかしこの問題を解決すべく次の方法にチャレンジ中である。 またヒトTIM-4の発現は、細胞の種類に依存するなど特別な制御機構が存在するのではないかと考えている。TIM-4の発現制御を調べるため、ヒト気道上皮細胞株BEAS-2Bおよびヒト肺胞基底上皮腺癌細胞株A549に様々なサイトカイン刺激をしてTIM-4の発現を確認した。しかしいずれの刺激でもTIM-4の発現は認められなかった。したがってさらに発現制御に関わる転写調節因子を探索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトsTIM-4を高感度に検出できるELISA系を確立したので、順天堂医院病院倫理委員会の承認のもと、様々な治療治験を受けている喘息患者さんの血清や、膠原病患者さん、さらには健常人から血清を採取してsTIM-4の測定を試みる予定である。発症と病態の進行状態にsTIM-4値が相関するか検討を行うが、特にそれぞれの疾患の間に差異があるか否か分析を行う。すでに健常人血清を確保するために病院倫理委員会へ申請し、審査中である。順次、種々の膠原病患者さんの血清も確保すべく計画を立てて進めていく予定でいる。 またsTIM-4の切断部位を同定するために、ヒトTIM-4の細胞内領域に6個のヒスチジンが並ぶタグをつけた発現ベクターを構築したが、液体クロマトグラフィー質量分析を行うために必要なタンパク質の量と純度が得られなかった。これを解決するために大阪大学蛋白質研究所に技術的および物質的なサポートをいただき、現在マウス、ヒトともに発現ベクターを再構築している。協力をいただきながら切断部位の同定を試みる予定でいる。 さらに、TIM-4発現制御に関わる転写調節因子を見出すとともに、免疫組織染色に使用可能な抗マウスTIM-4抗体を作製する予定である。作製したTIM-4抗体を用いて免疫組織染色を行い、関節炎モデルマウスの関節組織や喘息モデルマウスの肺病理組織における、これら分子の発現の局在を解析する。
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Research Products
(6 results)