2022 Fiscal Year Annual Research Report
腸管寄生病原アメーバにおける宿主特異性関連因子の解明
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20H03482
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
橘 裕司 東海大学, 医学部, 客員教授 (10147168)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧内 貴志 東海大学, 医学部, 講師 (80587709)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Entamoeba nuttalli / 病原性 / 肝膿瘍形成能 / モノクローナル抗体 / フローサイトメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
マカク属のサルを自然宿主とする腸管寄生病原アメーバEntamoeba nuttalliにおいて、他種アメーバとの比較ゲノム解析に基づき、プロリン・トレオニンリッチな8アミノ酸[G,E]KPTDTPSの42回反復を含む種特異的なタンパク質(PTORS)を同定した。これまでに作製した反復配列部分を認識するモノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリーにより、このタンパク質の栄養型虫体表面における発現状態を調べた。その結果、株間で発現している虫体の比率に違いが見られた。P19-061405株では、5.1%のみが陽性であった。また、48回の反復配列を含むNASA6株では、6.3%が陽性と判定された。これらの株をハムスターの肝臓に接種し、1週間後に膿瘍から栄養型を回収して培養したところ、それぞれ陽性率は14.0%、42.7%に増加した。そこで、この虫体を再度ハムスターの肝臓に接種し、1週間後に回収して培養したところ、陽性率はそれぞれ35.4%、86.2%にまで上昇した。この変化はウェスタンブロットによっても確認された。また、qPCRによって、遺伝子発現がハムスターの肝臓への接種によって上昇したことが確認された。肝臓の組織切片について免疫染色を行って解析したところ、NASA6株の1回目の接種から1週間後の肝臓では、8.7%の栄養型虫体がPTORSを発現していたのに対し、2回目の接種から1週間では、15.3%にまで有意に増加していることが確認された。これらの結果から、このタンパク質は肝臓組織内において発現が誘導されたことが明らかになった。PTORSは栄養型虫体の宿主内での生存や増殖のしやすさ、すなわち病原性に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
E. nuttalliの8アミノ酸反復配列を含む表面タンパク質が病原性に関わることを示唆するデータが得られた。一方で、海外の研究機関との共同研究による海外分離株の解析については当初の計画よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
PTORSの機能を明らかにするため、このタンパク質を強制発現させた赤痢アメーバ株を樹立し、宿主細胞への接着や貪食作用に対する影響について検討する。この強制発現株のハムスターにおける肝膿瘍形成能についても評価する。また、E. nuttalliの新たな分離株を樹立し、PTORSの発現状態や遺伝的多型について解析する。
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Research Products
(11 results)