2020 Fiscal Year Annual Research Report
単純ヘルペスウイルス新規遺伝子のさらなる再解読とin depth解析
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20H03492
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 哲久 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (40581187)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス / 新規遺伝子 / NanoPore / リピート領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、リボソーム・プロファイリングや大規模mRNA解析の開発により、ヘルペスウイルスがコードする新規遺伝子に注目が集まっている。最近、申請者は、実際に細胞内で「安定発現」する新規遺伝子を効率的に同定可能な「ウイルス遺伝子decoding法」を開発し、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)にのみコードされ、脳炎発症を司る非標準的翻訳産物’internarl ORF (HSV-1 specific iORF)’を同定した。本研究では、本技術を基盤に、(i) 長年、解析困難であった「HSV-1リピート領域にコードされる遺伝子」のdecoding法の確立とそのin depth機能解析; (ii) 単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)特異的な遺伝子の同定とそのin depth解析等を実施することで、HSVがコードする遺伝情報のさらなる解読を試みている。 本年度は、上記(i)および(ii)の解析のため、簡便かつ敏速なウイルスゲノム編集法が使用可能な野生型ウイルスであるHSV-1(F)株およびHSV-2(186)株に関して、感染細胞内よりカプシドにパッケージングされたウイルスゲノムを精製後、ショートリードおよびロングリード(NanoPore)型の次世代シークエンサー解析を試み、HSV-1(F)株およびHSV-2(186)株の信頼できる全塩基配列情報(リピート領域を含む)を取得した。また、このフルシークエンス情報を基盤として、先行研究に従い、「リピート領域」のペプチド・マッピングが可能な「質量解析データベース」を作出後、実施済みの新規ウイルス遺伝decoding解析法の生データを再解析することで、HSV-1リピート領域にコードされる2種類の新規遺伝子の解読に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HSVゲノムの約17%を占める「リピート領域」は、Polymeraseによる増幅が極めて困難であるため、長年に渡り、Polymeraseに依存する従来のシークエンス技術では、正確な塩基配列の決定が極めて困難であった。そこで、本研究では、Polymeraseを使用しない「NanoPoreシークエンサー」により、HSV-1の「リピート領域」の塩基配列を完全決定することが、プロジェクトの遂行上、不可欠なブレークスルーであった。幸いなことに、初年度に、このブレークスルーを達成し、期待通りHSV-1リピート領域にコードされる2種類の新規遺伝子の解読に至ったことから、本申請課題は、おおむね順調に進展していると考えられる。ただし、本申請課題の最終目標は、新規遺伝子を単純に解読するだけではなく、HSVの病態発現を司る新規遺伝子をスクリーンアウトし切ることにあるが、この点に関しては、初年度中には着手できなかったことから、当初の計画以上に進展しているとは言い難いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、以下の①~⑥を進める予定である。 ① 解読した新規HSV-1遺伝子に関して、所属研究室において確立したHSVゲノム編集法を用いて、Strep-tag等のエピトープタグや蛍光蛋白質mVenusを挿入した組換えHSV-1を作出する。②-mVenusと融合した形の新規HSV-1遺伝子をコードする組換えHSV-1感染細胞をダイナミックレンジの広いFACS解析に供することで、高感度にmVenus融合蛋白質の発現を検証する。③ ②の解析において、ポジティブだった新規遺伝子に関して、さらに、Anti-strep抗体等のエピトープタグに対する抗体による新規HSV-1蛋白質の安定発現、Strep-tacitnビーズによるStrep-tag融合新規HSV-1蛋白質の精製・質量解析を用いたORF領域の確認、以上2点を実施することで、新規HSV-1遺伝子が感染細胞において、実際に発現していること・ORF領域を確定する。④ ③の質量解析より得られた推定開始コドンを、HSVゲノム編集法により、周辺遺伝子への影響が最小となる形(Silent mutation等)で破壊し、新規HSV-1遺伝子欠損ウイルスを作出する。⑤ ④において作出した新規HSV-1遺伝子欠損ウイルスを、様々な培養細胞系でのウイルス増殖解析やマウス等の小動物を用いた病原性解析に供する。⑥ HSV-2に関しても、フルシークエンス情報を基盤として、先行研究に従い、「リピート領域」のペプチド・マッピングが可能な「質量解析データベース」を作出後、実施済みの新規ウイルス遺伝decoding解析法の生データを再解析することで、新規HSV-2遺伝子の同定を試みる。
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Research Products
(6 results)